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第29回紫式部市民文化賞 小説『よそになる身の 秀能物語』

印刷ページ表示 更新日:2019年11月4日更新 <外部リンク>

第29回紫式部市民文化賞  小説『よそになる身の 秀能物語』

受賞の言葉(早北 千枝さん)

 平安から鎌倉時代に変わる乱世に編まれた「新古今和歌集」は読みやすいとは言えません。ただ時代背景は面白いので「歌人たちが会話し、動きだしたら・・そんな小説が書けたら」と、十五年ほど前に思い付きました。

 「藤原秀能(ひでとう)」は、武士であったため、公卿が多い歌人のなかの少数派です。後鳥羽院に歌を認められ、そしてまた、院が起こした「承久の乱」に大将として参戦します。

 書き始めたものの中断を繰り返しました。去年、母が95歳でなくなり、たまたま長男に「かきかけの時代小説がある」とつぶやいたところ「読んでやるよ」と引き受け「面白い」と言って励ましてくれました。それから半年間かかってようやく完成しました。

 待っていてくれた市民文化賞に心から感謝しています。

受賞の言葉(早北 千枝さん)の画像
【著者略歴】
 1947年、北海道旭川市生まれ。72歳。三人姉妹の二女。地方公務員の父の転勤について稚内市で小学校に入学、岩見沢市で中学校に入学、網走市で網走南ヶ丘高校に入学し同高を卒業。弘前大学に進学し日本史を専攻した。大学の後輩に機動戦士ガンダムの作者、安彦良和さんがいる。
 卒業後は札幌市の親元に戻り、同市職員として3年間勤めた。このとき詩のサークルに入り、学生だった現在の夫と知り合った。夫は宮城県出身。
 1972年、東京で就職していた夫と結婚するため上京し、大田区、世田谷区に住んで会社勤めをした後、八王子市の公団住宅で子ども三人を育てながら、十年近くパート勤めをした。東京で20年間を過ごしたところで、夫が転職することになり宇治市に移住、27年が経った。転居が多い人生で宇治市が一番長い住み場所となった。この間は専業主婦で、子ども3人は、ほぼ独立し、夫婦2人の暮らし。
 もともと書くことが好きで、50代頃からエッセイ教室などにも通ったが、市民文化賞に応募することを文章上達の道と思い定め、エッセイや小説を断続的に応募してきた。

作品紹介と講評(外山 敦子選考委員)

 主人公「藤原秀能(ひでとう)」は、鎌倉時代前期の武士であり歌人である。16才で後鳥羽院北面の武士となり、以後武人として数々の功績を挙げる一方、後鳥羽院に歌才を認められ、『新古今和歌集』撰集の時に和歌所寄人の一人となる。承久の乱後は熊野に出家した。

 激動の時代を生きた秀能だが、一般に誰もが知っている歴史上の人物とまでは言いがたい。本作品は、その数奇な生涯に照明をあてた意欲作といえよう。資料を丁寧に紐解き、時代考証が細部まで行き届いているだけでなく、作者の創造で歴史的空白を補いながら、それが全体として破綻なく紡がれている点を高く評価したい。