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この度は、紫式部市民文化賞 選考委員特別賞を頂き、有難うございます。
30回という節目に受賞出来ましたこと光栄に思います。
今年はコロナという今までに経験した事のない環境の中で、劇団の公演や練習もままならず、落ち込みそうな気持ちを奮い立たせ、それならこの自粛期間をチャンスとして生かそうと思い、市民文化賞に挑戦しました。
いつも脚本ばかり書いているので勝手の違いに少し戸惑いましたが、頑張って書いた作品を評価して頂き、とても嬉しく感謝しております。
これが第一歩。これを機に小説にもどんどん挑戦し、楽しんでいただける作品を書けるよう、いっそう努力して参ります。
【著者略歴】
北海道夕張市生まれ
昭和56年 京都へ
昭和59年 八幡バトンクラブ設立
以後20年、スポーツ少年団にてバトントワリング指導
平成15年 文芸社より 詩集「とうさんの背中」出版
平成16年 京都熟年ミュージカルアカデミー入学
平成18年 劇団ケセラセラ 立ち上げ
自主公演の傍ら、老人ホーム等で訪問公演多数
平成18年~
平成31年 宇治橋商店街にて喫茶店経営
平成24年 劇団そら 立ち上げ
自主公演の傍ら、社会福祉協議会等でおれおれ詐欺などの啓発劇を行う
現在、劇団そら代表
小説を書くということは、どこか今の現実を見つめなおしたいという欲求と絡み合っているような気がする。本作はそうした日常のどことない不満や不安を、言葉によって解決していこうとしているかのように、積極的に虚構という形式を活用している。中年の夫婦や、独身女性に訪れる「どことない不安」を、柱時計の音とともに訪れる夢と現実の端境によって異化していく、戯曲仕立てのような展開は、わくわくと楽しめる。
人生は長い。その時々に起こる様々な出来事は、記憶のなかで熟成したり、曲げられたりしながら、その一瞬の夢や失望を交互に繰り返して、人々は生きていく。本作はそうした人間の哀歓を夢と現実のあわいのなかに表現して、読者に人生の機微を伝えようとしている。