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第27回紫式部文学賞 『浮遊霊ブラジル』

印刷ページ表示 更新日:2019年11月4日更新 <外部リンク>

第27回紫式部文学賞

受賞作品:『浮遊霊ブラジル

著者:津村 記久子 (つむら きくこ) さん

作品紹介と講評(竹田 青嗣 選考委員)

 『浮遊霊ブラジル』は、表題作のほか「給水塔と亀」「アイトール・ベラスコの新しい妻」「個性」などを含む短編集。心不全で突然死んだ主人公がアラン島に行きたいという未練を残していたため浮遊霊となり、さまざまな人々に取り憑くという「浮遊霊ブラジル」や、飽・物語の罪で「物語消費しすぎ」地獄におちた「私」の、地獄での担当鬼との日常を描いた「地獄」など、超現実的なフィクションもある。どんな設定からでも、普通の人間の生活感情の機微が繊細に浮かび上がり、その一つ一つが何かを“思い当たらせてくれる”ので、読み手をたちまち「物語」の世界に引き込む力がある。よい短編は、人間の生活態度を少しずつ聡明にする、といいたくなる佳作である。

講評 (鈴木 貞美 選考委員長)

 さして変哲もない個々人の日々の暮らしのなかで、ふとした感情の起伏がもたらす予期せぬ出来事。何気ない他人の提案を、その場の調子で積極的に受け入れてしまったり、浮かび出た昔の思い出や疑問に変に固執したり・・・。そんな誰もが経験するような小さな違和の泡立ちをとぼけた味で次つぎに浮かびあげてみせる短編集。表題作は死後の霊が外国人にとりついて、海外に漂い出る奇譚だが、日常感覚のまま、自分が死んでいることを忘れかけたり、意外ななりゆきにあわてたりと、落語にも似た可笑しさが匂う。

受賞の言葉

 このたびは大変栄誉ある賞の受賞のご連絡を受け、とても驚いています。受賞作の『浮遊霊ブラジル』は、2011年に書いた「給水塔と亀」から2016年の「浮遊霊ブラジル」まで、各文芸誌さんの寛大な承諾のもと、とても自由に書いたものばかりをおさめた初めての短編集です。さまざまな挑戦をしたような、好きなことばかり書いたような本が、このような形で日の目を見るとは思ってもみませんでした。京都府宇治市は、以前小説に登場させたことがある、個人的に勝手に縁のある土地で、そちらの文学賞を頂戴できるのはとても奇遇であるように思います。目をかけてくださってどうもありがとうございました。そしてすべての短編の担当編集者さんたちに、感謝を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。

著者略歴

 1978年1月23日生まれ。大阪府出身。大谷大学文学部国際文化学科卒。大阪府在住。小説家。2005年「マンイーター」で太宰治賞受賞(単行本化の際『君は永遠にそいつらより若い』に改題)。2008年「ミュージック・ブレス・ユー!!」で野間文芸新人賞受賞。2009年「ポトスライムの舟」で芥川龍之介賞受賞。2011年「ワーカーズ・ダイジェスト」で織田作之助賞受賞。2013年「給水塔と亀」で川端康成文学賞受賞。2016年「この世にたやすい仕事はない」で芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。


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