本文
心の内に、書くことへの漠然とした憧れの高まりを感じ、思い立って応募しました。思えば、私の書くことへの関心は、中高生の頃、読書感想文を友人や先生に面白いと言ってもらった時の嬉しさにあるでしょうか。嘘のない文章ほど、面白いと言ってもらえました。そんな素朴なきっかけですから、自分の身に降りかかったこと、自分が感じたことしか書けません。とはいえ作品中の出来事は、細部まですべて実体験として書いたわけでもありません。あくまで創作にすればこそ、自分の感情を嘘なく表現できるというスリルを、作品を書きながら感じていました。初めて作品として完成させた文章がこのような賞を受賞し、皆様の目に触れることに驚きつつも、大変光栄に思います。
そこに鳥が現れるから、故郷を流れる宇治川、大学生活の傍の鴨川、旅先で眺めた隅田川の対比に気づき、覚束ない恋も言葉になりました。面白く読んでいただければ、これ以上の喜びはありません。

【著者略歴】
2005年生まれ。
宇治市立大久保小学校、広野中学校を卒業。
現在、京都大学文学部にて東洋史を専攻。
主人公の恋の場面には、いつも鳥のイメージがよりそっていた。高校生の時、バレンタインの日に好きだったが、そう言えないで、相手にチョコレートを渡した。実らないという予想のとおり、相手は儀礼的にクッキーの詰め合わせを返してくれたが、「鳥の形をしたカード」が添えられていた。大学時代はひとつ年上の鳥が好きな男子学生と鴨川、宇治川、隅田川を散策する。隅田川を歩いて在原業平の東下りを思い出すが、彼とともにいる自分は少しもさびしくはないと思う。鳥のイメージを恋愛に重ねる表現は、暗示的な効果をあげている。小品ではあるが、ストーリーよりもイメージを重視した散文詩のような表現がユース賞にふさわしいと評価された。