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第36回紫式部市民文化賞奨励賞 小説『佐治さんの椅子』

印刷ページ表示 更新日:2026年9月24日更新 <外部リンク>

第36回紫式部市民文化賞奨励賞  小説『佐治さんの椅子』

受賞の言葉(大幡 季生さん)

 若いころから、まわり道や寄り道をしながらも、ずっと書き続けてきました。仕事に追われる日々が続き、思うように時間のとれない苛立たしさもありましたが、退職してからはとりあえず短編を10篇、その先に100篇を目標に書き進めました。それが今では100篇は疾うに超えて、ならば次は200篇と定めています。もとより大事なのは数より質なのですが、あくまでも書き続けるための目安です。小説の習作を始めたころから、長大な作品よりも隅々まで目配りのできる短いものが自分の性分に合っていると思い、それは長編の方が難しく短編の方が易しいという問題ではなくて、性分としてどちらが合っているかということなのですが、そうしてたとえ1篇でも2篇でも佳い短編小説を世に遺したいと大それたことを願っているのです。とはいっても戦時下生まれの83歳の高齢ですから、これからももっと頑張れ!と背中を押されても、なんとも申し上げ難いところです。

大幡氏

 

【著者略歴】

昭和18年、京都府生まれ
峰山高校、立命館大学文学部卒
京都・十字屋に43年間勤務し、専務、社長を務めて65歳で退任
退職後はもっぱら執筆に専念​

作品紹介と講評(選考委員 中川 成美)

 昭和の初めに建てられた小さな茶業組合の再編によって所長を退職することになった佐治さんの心残りは20年以上座り続けた椅子であった。古い木製の回転椅子は、佐治さんに意欲や風格をもたらしてきたからだ。だが、椅子は佐治さんがしらないうちに、バスの待合室に下げ渡されていた。それをようやく譲り受けた引退後の佐治さんに再び誇りがよみがえってきた。
 人間にとって仕事は存在の証しともいえる重要なものだが、佐治さんにとってそれは木製の回転椅子によって象徴されている。そうした人生の機微を、茶畑の中の日常と溶けこませながら、ほのぼのとした味わいを醸し出す本作は、読者に人生の感慨と目的を考えさせてくれる。


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