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本市の伝統的地区である宇治は、宇治川の自然景観を骨格に、両岸に歴史的な文化財と町並みが伝えられ、
多くの観光客を迎えています。
急流宇治川に橋が架けられたのは飛鳥時代。平安時代には貴族によってまちづくりが行われ、都市として歩み
出しました。中世になると宇治茶が名声を博し、貴族が創りあげたまちにお茶の香りが重なりました。
そして今、歴史が積層する宇治の市街地には伝統文化が息づき、周囲には覆いをかける独特の茶園
が点在するなど、豊かな歴史と伝統産業が重層する個性的な都市景観が広がっています。
平成21年2月、美しい自然と歴史的な市街地、そして宇治茶の伝統を継承する「宇治の文化的景観」がわが国民
の生活や生業の理解のために特に重要な景観地として、都市では初めての「重要文化的景観」に選定されました。
重要文化的景観の選定申出にあたっては、文化的景観を形成する重要な構成要素(景観重要構成要素)を
記載することになっています。
この景観重要構成要素とは、文化的景観をかたち作っているさまざまな要素のうち、本質的な価値を担って
いるものです。
文化的景観の制度は、景観を構成する諸要素の変化を受け止める動態保存を前提とする中で、いわば個
性を支える景観重要構成要素の保全と継承に努めることで、文化的景観の価値を維持し、持続的に地域を
発展させていくことを目指しています。
この宇治の文化的景観の本質的な価値を示し、景観特性を構成する重要な構成要素を評価類型すると、
宇治地区の平安時代から現在に至る都市の変遷過程を示す、社寺、街路、街区、埋蔵文化財等の要素
、山紫水明の自然景観や水運・遊興・宇治橋の往来も含めた宇治川の文化的景観を示す、河川、橋、公園、
家屋等の要素、宇治茶の生産から加工・販売等の茶業のあり方を示す、茶畑、家屋、研究所等の要素に
大きく3分類でき、この分類評価を基に景観重要構成要素を特定しました。
宇治川・井川の2河川、宇治橋通り・県通り・本町通りなど域内53路線の府道と市道、平等院や宇治上神社
など13社寺、宇治橋通商店街・平等院表参道商店街・宇治源氏タウン銘店街の3商店街、茶業・観光・近代化
に関係し、宇治の特徴を良く示す重要な家屋14棟、宇治と白川の茶畑をはじめ、仏徳山や朝日山、琴坂、宇
治橋、宇治公園、京都府茶業研究所、遺跡、街区など13種95件の景観重要構成要素を特定しています。