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新田町内会は、京滋バイパスの宇治東IC出入り口の北側に位置する、約180世帯の自治組織です。令和4年度から市の地域コミュニティ活性化事業補助金を活用して、ペットの避難所への同行避難の理解を広めるための事業をNPOと連携して実施されており、近隣の町内会にも事業の理解が広まっています。
新田町内会には朝・夕に犬の散歩をさせている人がたくさんおられます。災害時に、「宇治市に同行避難できる避難所は実質的にはないことを町内の人たちは知っているのだろうか」と不安になりました。
そこで、町内会にアンケートをとったところ、
・高齢者世帯ではペットを飼っている世帯が多い。
・ペットを飼っていない人も、同行避難については賛成。
ということがわかり、「宇治市にペットの同行避難場所がないこと、私も心配だったのよ。」というお声もありました。そこでまずは、自分たちの町内会からペットの同行避難の理解を進めていきたいと思いました。
ペットと防災というテーマでも活動されている「認定NPO法人アンビシャス」にイベント実施の協力をお願いしました。イベントの中では、
・ペットのしつけ
・災害時の同行避難への平常時の備え
を実施していただきました。ペットは適切にしつけをすることで、排せつをコントロールできること、むやみに吠えなくなることを知り、ペットを飼っていない人に同行避難の理解をしてもらうにも、様々な人にイベントに参加してもらえればと思いました。そして、平時から地域のつながりがなければ、災害時にいきなり協力することは難しいと考え、地域のつながりを作るためにも町内会内で継続して事業を実施し、町内会のペットを飼っている人も飼っていない人にも理解を得る必要がいるため、市の補助金を活用して、令和4年度から本格的に事業を始めました。
1年目は、新田町内会にお住まいの方々を中心にペットの有無による考え方の違いを理解することやしつけ方について啓発を行ってきました。2年目からは、隣接する折坂町内会、大和田区自治会の他、同じ指定避難場所である宇治黄檗学園校区の広岡谷や木幡の町内会にも事業の案内やイベントへの参加を促しました。
これまでの2年間を通した感想は、普段から町内会間の交流がないため、急には意思疎通が難しいということがわかりました。これまで他の町内会と広報チラシを回覧し合ったことはありませんでしたが、今回どの町内会にも回覧を気持ちよく引き受けていただけて、画期的な取り組みになりました。その中でペットを飼っておられる方々はその意義に共鳴されており、いつ起こるかわからない災害に備えることは大事であると認識されていました。
3年目を迎える令和6年度は横のつながりをより発展させ、同行避難訓練の実施に向けて働きかけるとともに、地域の犬の散歩コースである黄檗公園を中心に公園清掃を行うことで環境維持に貢献しながら、ペット連れ同士の仲間づくりを目指していきたいと思います。
▲ペットと暮らしのセミナー(実践編)(令和6年2月黄檗公園プールエントランスホールで実施)
町内会の加入率は、年々減少傾向にあり、一方で少子高齢化が進む地域の高齢者世帯などでは、犬や猫などのペットが多くみられ、各世帯で家族の一員となっています。近年の国内のペット数は、15歳未満人口の数より多くなっています。今やペットは、地域の新しい一員とみなさざるを得ない状況にあり、災害時における避難の対象にもなります。ペットを地域の一員として捉え、ペットの有無で生じる住民間の意識の差を埋めながら、避難者情報にペットを加えるなど、コミュニティで包摂していく基盤を整えていきたいと思います。老いも若きもペットを通して心を通い合わせることでコミュニティの再構築を図り、価値観を共有する近隣住民とのネットワークを広げ、災害時にはペットも含め誰もが支え合える環境を整えていくことが重要だと思います。
▲動物ふれあい教室(令和6年3月黄檗体育館前芝生公園で実施)