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【イベントレポート】源氏物語とそのゆかりの植物(連続講座)見学編
植物を知れば、源氏物語や紫式部がもっと面白くなる!
令和5年10月6日(金曜日)に宇治市植物公園で開催しました。イベント概要から当日の雰囲気、参加者の声をレポートします。
この催しは、「源氏物語とそのゆかりの植物」と題して、講義編と見学編に分けて実施しました。見学編では、京都府立植物園で長年「名物園長」として親しまれてきた松谷茂先生の案内で、園内に植えられている源氏物語ゆかりの植物を観察しました。
第1講「講義編」の様子はこちらから↓
https://www.city.uji.kyoto.jp/site/shogaigakushu/69132.html
夕方にひっそりと咲き、翌朝にしおれるその花のように、光源氏を夢中にさせながらも儚く生涯を閉じる「夕顔」。気高く美しい容姿が、春の曙(あけぼの)の霞(かすみ)の間から咲きこぼれる「樺桜(かばざくら)」のようだと例えられた紫の上……。
源氏物語には、なんと100種類を超える植物が登場し、時には登場人物の人柄や容姿を伝える表現として、また、時には心のうちを推し量るキーアイテムとして、物語を鮮やかに彩ります。
しかし、「それらの植物を知っていても見たことがない」「どんな植物か知らない」という人も多いのではないでしょうか? それを知識としてだけでなく、先生の説明を受けながら実際に観察して学べるのが本講座のポイント!
第1講「講義編」で予備知識を得た参加者は、見事な秋晴れの中、いよいよ実物を見て触れるべく、第2講「見学編」で宇治市植物公園を訪れました。
宇治市植物公園には、50種類近くの源氏物語ゆかりの植物が植えられています。参加者は研修室で説明を受けた後、見学スタート。松谷先生の解説を聞きながら、園内をぐるりと1周しました。
園内を巡る中で、松谷先生が特に目を輝かせたのは、第二十七帖「篝火(かがりび)」にだけ登場する檀(まゆみ)を前にした時。マユミはしなやかで強い材質で、弓材として使われたことから「真弓」と呼ばれるようになったという植物。細い枝が斜め上に伸び広がるため、その重みでしなり、傘状の樹形になるのが特徴です。
「紫式部は作中でマユミの樹形を『広ごり伏したる檀』と表現していますが、まさにその通り。このたった8文字に紫式部の観察力と表現力の鋭さが現れています」と松谷先生。
そんな先生の解説を受けながら、参加者は実際に葉の感触や花の香りを確かめたり、画像を撮影したり。植えられているアカマツと用意されたクロマツの葉先を触り比べた際には、「アカマツの方が柔らかい!」「痛くないね」と感想を述べあったりしていました。
2023年前期放送のNHK連続テレビ小説「らんまん」を見て、草花に興味を持ったという森田さんご夫妻。参加した感想を伺うと「植物公園には来たことがなかったんですが、面白いですね。由来を聞きながら実際に見ると、植物により親しみが持てて、来年の大河ドラマもっと楽しみになりました」とにっこり。
植物公園の常連だという星出さんは、茶道をたしなむ薬剤師さん。「源氏物語ミュージアムで開かれた講座にも参加させてもらって、楽しんでいます。お茶でもお花(茶花)のことは習いますし、仕事柄、植物について知らないわけではないのですが、文化的な側面のことは自分で勉強しようと思っています。」
子育て中の坂根さんも「私も子どももこちらの植物公園が大好きで、イベントにはいろいろ参加させてもらっています。今日は内容的にちょっと難しいかと思って一人での参加ですが、子どもにも今日教えてもらったことを伝えたいです」とお話しされていました。
「1000年も前、一人の女流作家・紫式部がそれほど多くの植物を知っていたこと、一つの物語にこれほど多くの植物を登場させたことは驚異に値します。紫式部の情緒豊かな表現は、一朝一夕に培われたものではなく、時間軸に沿った粘り強いフェノロジー(植物季節学)に基づく植物観察の結果。植物誌(史)の観点から、源氏物語を見直すのもおもしろいです!」と、松谷先生。
皆さんもぜひ、実際に物語に登場する植物を観察してみてはいかがでしょうか。
その他ご感想(第2講「見学編」)
- 講義で源氏物語に出てくる部分を伺った上で、実際に植物公園で松谷先生から1つ1つの植物の葉や花、実を紹介いただき、新しい発見、驚きもあり楽しく学べました。
- 植物公園の園内図やくわしい資料をいただけて有難かった。季節毎に訪ねようと思う。
- ゆかりの植物に表示板があり、良かったです。源氏物語を通して、植物とゆかりの文章も教えていただきありがたかったです。
- 宇治での源氏物語と植物のつながりを、市民全体でアピールできればよいと思います。宇治に植物公園があってよかったです。また同じような続編をよろしくお願いします。
- 表示板のすべてを見てみたい。花の時期、実の時期一覧があるといい。その頃に見に行きたい。ありがとうございました。また、続編お願いいたします。
イベント概要
源氏物語とそのゆかりの植物【連続講座】
源氏物語に出て来る植物にスポットを当てた、座学と植物公園見学の2回連続講座。ゆかりの植物を学び、実際に触れることで、源氏物語の世界をより深く理解し、宇治の歴史・文化の魅力を感じてもらう。
・講師
松谷 茂さん(京都府立大学客員教授、京都府立植物園名誉園長)
・日時
第1講講義編:令和5年9月22日(金曜日)13時半~15時
第2講見学編:令和5年10月6日(金曜日)13時半~15時半
・会場
第1講講義編:宇治市生涯学習センター
第2講見学編:宇治市植物公園
・定員
30名(応募者多数の場合、抽選。2回とも参加の人を優先)
・参加費
1000円