本文
「世界人権宣言75周年京都アピール」について
世界人権宣言75周年京都アピール
京都府、京都人権啓発推進会議、京都市、京都地方法務局及び公益財団法人世界人権問題研究センターでは、基本的人権尊重の原則を定め、初めて人権保障の目標や基準を国際的にうたった世界人権宣言を記念し、その意義や理念を再確認するとともに、すべての人の人権が尊重される社会の実現を目指す決意を新たにするため、「世界人権宣言75周年京都アピール」を策定されました。
世界人権宣言75周年京都アピール
1948(昭和23)年12月10日、第2次世界大戦の悲惨な経験を教訓とし、こうした悲劇を二度と繰り返してはならないという反省の下、第3回国際連合総会において、「世界人権宣言」が採択されました。全30か条からなるこの宣言は、人間が人間らしく幸せに生きていくための権利である人権の国際的な基準を示した大切な文書です。
特徴的なのはその前文で、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利とを承認することは、世界における自由、正義及び平和の基礎である」と述べ、人権が守られないところには自由も正義も、平和もないという考えを採用しています。今年は、宣言が採択された記念すべき年から数えて75周年に当たります。
世界人権宣言を具体化するために「国際人権規約」をはじめとする多くの人権に関する条約が採択されてきました。また、「人権教育のための国連10年」や「持続可能な開発目標(SDGs)」など、宣言の理念を実現するための様々な取組も進められています。
わが国においても、基本的人権の保障をうたった「日本国憲法」のもと、人権問題を解決するための施策の推進や関係団体による取組が進められてきました。近年も2016(平成28)年にいわゆる人権三法が施行されたほか、2023(令和5)年6月には、「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」が施行されたところです。
しかしながら、私たちが目にしているのは、大変に厳しい現実です。
世界的に猛威を振るい、国内外の社会経済に大きな影響を与えた新型コロナウイルス感染症の流行は、感染者等への偏見や差別の問題を生じさせ、ハンセン病やエイズ・HIV感染症といった過去の苦い経験を経た今もなお、感染症により深刻な人権侵害が起こりうることを示しました。
また、2022(令和4)年2月に始まったロシアによるウクライナ侵略では、多くの尊い命が奪われるなど、世界は今なお、地域紛争や自然災害、難民問題や貧困など、平和と人権が脅かされる事態に直面しています。
わが国に目を移しても、部落差別や外国人等に対するヘイトスピーチ、女性・子ども・高齢者・障害のある人への暴力や虐待などが依然として存在しています。また、インターネット上の情報流通においては、その匿名性や情報発信の容易さなどを悪用した人権侵害が横行しており、より効果的な対策が喫緊の課題となっています。
「人権の世紀」といわれる21世紀は、「人権文化」を輝かせる時代です。「人権文化」は、「いのちの尊厳を自覚し、人間が人間の幸せを自然と共に営み、新しい歴史と文化を共に生んでいく、その行動と実り」であり、私たちは、家庭・学校・職場・地域に根ざした「人権文化」を実らせていかなければなりません。世界人権宣言の75周年に当たり、人間を中心に置き、人間一人ひとりを大切にする宣言の精神と意義を改めて確認し、自然と人間、そして人間のすべてが共生し、自由・正義・平和にあふれた社会の実現を共に目指していきましょう。
2023(令和5)年12月9日
京都府知事・京都人権啓発推進会議会長 西脇隆俊
京都市長 門川大作
京都地方法務局長 沼田知之
公益財団法人世界人権問題研究センター理事長 坂元茂樹