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宇治市議会(行政視察報告 令和7年度) 4
総務常任委員会の行政視察報告
年月日:令和7年8月25日(月曜日)~8月26日(火曜日)
視察先:市川市(千葉県)、江戸川区(東京都)
出席委員:稲吉委員長、角谷副委員長、岡本、大河、渡辺、鳥居、佐々木の各委員
執行部:遠坂危機管理監、荻野総務・市民協働部長
市川市(8月25日)
【調査項目】
ワンストップ窓口とDX(窓口予約システム等)について
『市の概要』
- 市制施行:昭和9年11月3日
- 人口:49万7,575人(令和7年7月31日現在)
- 面積:56.39平方キロメートル
1.ワンストップ窓口とDX(窓口予約システム等)について
(1)概要について
来庁者が便利、スピーディーになったと実感できる窓口を目指し、転出、出生、婚姻及びお悔やみなどの生活の節目で必要となる手続や、国民健康保険、介護保険、障害福祉等の手続について、来庁者が各窓口を回ることなく1か所で行うことができるようワンフロアに集約した、ワンストップ窓口を実施している。来庁者が手続を終えるまでのフローは以下のとおり。
1.総合受付による聞き取り、番号札の発券、受付票の作成
総合受付にて来庁者の用件を聞き取り、番号札を渡して待合スペースで待っていただく。総合受付は聞き取った内容から受付票を作成し、手続の担当職員に引き継ぐ。
2.番号による呼び出し
担当職員が受付票を確認し、番号札を呼び出すタブレットを操作する。番号がモニターに表示され音声で呼び出しがされる。なお、待ち状況は番号札に記載されたQRコードを読み込むことで確認ができる。
3.ワンストップ窓口での手続
番号で呼ばれた来庁者を職員がワンストップテーブル、もしくは手続ごとの専用ブースへ案内して手続を行う。手続の後、別の課にて後続の手続があれば、担当へ内線電話で連絡する。後続課職員が連絡した職員と入れ替わって手続を行い、全ての手続が完了するまでこれを続ける。
(2)ワンストップ窓口とDXの導入に至る経過等について
平成25年策定の「市川市庁舎整備基本構想」において、ワンフロア集約型の市民窓口の設置の方針を定めた。また、平成31年度からDXの推進に着手し、市公式LINEアカウントのサービスを開始、令和2年4月にはDXの指針を明文化した市川市DX憲章を策定した。前市長就任後の平成30年に、従来の「窓口」と異なる先進的なレイアウトを検討するよう要請があり、窓口部門の若手職員を中心とした「新第1庁舎レイアウトプロジェクトチーム」を立ち上げ、来庁者が各部署の窓口を回るのではなく、職員が入れ替わり手続を行う、半個室ブースでのレイアウトを策定した。さらに令和元年にはDXの考え方を取り入れ、将来的に市民が窓口に来る必要が限りなくゼロになることを想定した柔軟な配置が可能となるようレイアウトの見直しを行い、現在のテーブル型のワンストップ窓口のレイアウトとなった。
(3)主な取組及びその成果について
窓口業務を見直すことで、来庁者が便利になったと実感できるよう、業務改善、ICTの一層の活用、職員の意識改革に取り組み、業務フローによる総点検を行い、証明書の発行業務、ワンストップサービスで手続が可能なもの、ワンストップサービスが不可能なものと業務の区分けを行った。ワンストップ窓口では、ワンストップサービスで手続が可能なものを集約して対応しているため、複数の手続で来庁された方はそれぞれの窓口を自分で回ることなく1か所で手続を行うことが可能となった。また、ワンストップ窓口導入前の時間を把握していないため、具体的な短縮時間は分からないが複数課を回る来庁者は2課目以降の順番を待つ必要がないため、待ち時間は確実に短縮できている。
(4)今後の課題と取組について
今後の課題として、受付時間外における職員待機の問題がある。総合受付で聞き取った受付票の情報が、窓口担当課にリアルタイムで共有されないため、窓口担当課は来庁者が必要な手続を確認しにくい状況にある。そのため、先に手続を始めた課から連絡があるまで待機することとなり、これが受付時間外まで及ぶことや、担当する手続がなく待機する必要がなかったといった事態が発生している。こうした事態は転出入が増加する3~4月に多く、受付票の情報共有を効率的に行えていないこと、各課への連絡時間の確保が難しいことが原因となっている。課題解決に向け、定期的に関係各課との連絡会議を開催し、現場の意見を吸い上げながら改善策の検討を行っている。
(5)その他
委員からは、原課ではワンストップ窓口の担当を決めているのかについて、デジタルディバイドを含めた高齢者や外国人への対策について、導入後の財政負担、時間的負担の状況について、電子市役所としてどこまで目指すのかについて、お悔やみ対応は1人の職員で担当すると聞いたが複数課にまたがる案件の対応方法について、上下水道や市営住宅の手続について、対応する職員は正規職員なのか会計年度任用職員なのかについて、ワンストップ窓口は庁舎建て替えがあったからできたのかについて、カウンター方式ではなく広いフロアでの対応とした理由について、対応する職員が閲覧できるデータベースは自分の課の情報だけなのかについて、書かない窓口など、ワンストップ窓口にも様々な形態があるが本形態を採用した経過について、導入後の様々な市民意見を受けて次なる構想はあるのかについて、新型コロナ時に来庁者が集中したときの対応について等の質疑がなされた。
「市川市視察の様子」
江戸川市(8月26日)
【調査項目】
AIを活用した被害把握システムについて
『市の概要』
- 市制施行:昭和7年10月1日
- 人口:69万7,078人(令和7年8月1日現在)
- 面積:49.09平方キロメートル
1.AIを活用した被害把握システムについて
(1)概要について
被害情報をリアルタイムで把握するためには画像を活用することが効果的であり、江戸川区では地域を俯瞰的に確認する高所AIカメラに加え、約200か所に市街地カメラを設置する。また、建物の死角部分を補完するためドローンを活用した情報把握に努めていく。なお、江戸川区では、AI(カメラシステム)を活用した被害把握システムを2つ運用している。
1.AI煙検出システム
高所AIカメラで撮影した画像を基に、AIを活用して火災が発生した際の白煙を検知し、区防災担当者にメールで通知を行っている。煙を発見しても人が火災かどうか判断すること、どこで火災が発生しているかを特定することが困難であり、それらを判別するためAIを活用している。
2.AIによる水位計測
江戸川区は一級河川や海によって、三方を水に囲まれており、区の陸域の約7割が満潮時の水面よりも標高が低いゼロメートル地帯となっている。一級河川の近くには国土交通省のカメラが設置されており、この情報を区も共有するとともに、区でも独自に4か所のカメラを設置している。従来はカメラのライブ映像を映すだけであったが、人の目による監視にも限界があり、河川水位AIカメラで撮影された画像を基に、AIを活用して水面との境目を判別し、測量により設定した堤防の高さ等との差分によって現在の水位を判断する仕組みを導入した。現在は安定運用を図っているが、今後は蓄積したデータを基に高潮による影響など、水位予測ができないかAIベンダーとも協議している。
(2)災害時防災用カメラ及び自営通信網の構築について
画像を活用する仕組みをつくっても発災時に通信が途絶えては意味がないので、発災時に通信が途絶えることがないよう、現在、町なかの通信インフラに頼らない建物の屋上と屋上の間を無線アンテナで結ぶ自営通信網の構築を進めている。無線アンテナは遮るものがないことを前提に最大豪雨レベルの天候を考慮して配置距離をおおむね2キロメートルとして整備している。また、カメラ等の電力はソーラー蓄電池による自立運転型を採用している。なお、この通信網を活用することにより、約200か所のカメラ画像をリアルタイムで確認できるほか、自営通信網内の拠点施設とのテレビ会議や東京都テレビ会議システムと連携し、東京都や関係機関との会議が可能となる。
(3)今後の取組について
高所AIカメラ、市街地カメラの設置を鋭意進める。また、自営通信網の活用では保健所や拠点病院と接続することで避難者のオンラインによるトリアージを行うほか、消防・警察などの関係機関と連携することによって、より迅速な初動対応を行うことができるよう関係機関と協議を進めていく。
(4)その他
委員からは、運用後の実績について、運用の体制と今後の維持管理経費について、東京都との広域連携について、SNS情報の収集やAI解析を行う株式会社スペクティの取組実績について、消防に係る東京都と区の役割分担について、区の把握した情報の東京都との共有について、水害時にはAIの高潮情報を活用した避難指示を行うことになるのかについて、カメラ画像をリアルタイムに確認できるが担当課が常に監視しているのかについて、議会への情報共有について、死角へのドローンの活用について、市街地カメラ設置の進捗状況について、資材高騰があるが費用は当初見込み比でどうかについて、陸域の7割がゼロメートル地帯の中で水害時の避難場所について、ドローンの運用に当たり航空法の規制をどうクリアしたのかについて、防災カメラは防犯にも使用できるのかについて、キヤノンのシステムは納入実績があったのか、江戸川区と共同で開発したのかについて、市街地カメラ設置に当たってのプライバシーの問題について、住民への情報伝達手段について、防災アプリを使えない方への情報伝達手段について、ドローンはオペレーターがいるのかについて、浸水被害時の職員の参集方法について、危機管理部局の職員数について等の質疑がなされた。
「江戸川区視察の様子」





