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宇治市議会(行政視察報告 令和6年度) 4
文教・福祉常任委員会の行政視察報告
年月日:令和6年5月21日(火曜日)~5月22日(水曜日)
視察先:高知市(高知県)、高知県
出席委員:木本委員長、今川副委員長、真田、宮本、谷上、渡辺、西川(美)の各委員
執行部: 木上教育長、星川健康長寿部長
高知市(5月21日)
【調査項目】
保幼小連携・接続の取組について
『市の概要』
- 市制施行:明治22年4月1日
- 人口:31万4,324人(令和6年5月1日現在)
- 面積:309平方キロメートル
1.保幼小連携・接続の取組について
(1)高知市の現状について
高知市には公立幼稚園が1園、国立幼稚園が1園、私立幼稚園が6園、公立保育所が26園、民営保育所が61園、認定こども園が16園など様々な施設が存在し、41校ある市立小学校に様々な園から校区を越えて入学してくる現状がある。
市全体で保幼小の連携に取り組むこと、及び高知市のどこの園からどこの小学校に入学しても幼児期からの滑らかな接続を意識したカリキュラムが行われるようにすることが今まさに求められている。
(2)主な取組について
主に小1プロブレム対策事業と保・幼・小連携推進地区事業の2つの取組を行っている。
小1プロブレム対策事業は4月~11月までの間、各校に小1サポーターの配置、スタートカリキュラムの実施・改善という2つの両輪で実施することにより、小1プロブレムを予防し、安心して自己を発揮できるスタートにつながっている。令和6年度では39校において本事業を実施し、小1サポーターの登録者数は90名となっている。
保・幼・小連携推進地区事業は学校訪問で校区の連携園や保幼小連携の取組状況の把握・支援、周知・啓発、連携園の調整などを行うもので、令和5年度からは全41小学校区で実施をしている。
また、小学校入学前からの園児と児童の交流や年長児保護者への働きかけとして小学校生活についての説明会などの「人をつなぐ」取組、保幼小の教職員の合同研修や公開保育・公開授業を基に互いの実践を知る場を設定するなどの「組織をつなぐ」取組、5歳児後半のアプローチカリキュラムや小学校入学当初のスタートカリキュラムなどの「教育をつなぐ」取組も行っており、子供や保護者の安心感、子供の学びと育ちに関する保幼小の教職員の共通理解、発達の特性や学びの個人差に対応した指導・支援につながっている。
(3)高知県保幼小の架け橋プログラム事業について
本事業は5歳児から1学年2年間のカリキュラム開発を文科省から全国19自治体へ委託、高知県が受託し、春野東小学校区がモデル地域に指定され県市が連携して実施しており、子供を真ん中にして互いの教育内容を話し合い、「目指す子供像」の実現に向け、架け橋期のカリキュラム作成や教育方法の充実・改善を図るものである。
初年度(令和4年度)は、カリキュラム開発、2年目は実施・検証、3年目は改善・発展サイクルの年として取組を進めている。具体的には、保育所、認定こども園、小学校等が参加したカリキュラム開発委員会で地域の実態把握や目指す子供像、方向性の共有等を行い、カリキュラム連絡会で教材研究、指導計画の見直し等を行うなどのカリキュラム開発、5歳児園内研修や、生活科や算数科の1年生校内研修といった園と小学校の交流の取組、架け橋プログラムシンポジウムの開催などがあり、園での経験を生かした授業作りにつながっている。
また、令和6年度は保育所・幼稚園等及び小・中学校の関係者が幼児教育に関する課題を共有し、課題解決に向けて研究協議等を行うことで、小学校などとの円滑な接続を図ることを目的としたスタートカリキュラム公開授業・協議・講義を4月25日に実施している。
(4)取組による成果について
スタートカリキュラムの見直しによる指導の工夫、教職員連携・交流活動の内容の改善、公立5歳児園内研修による教職員の幼児教育の理解、「架け橋プログラム」モデル地域の取組の発信による架け橋期の理解と共有などの成果につながっている。
(5)課題について
全41の各小学校区の実態に応じた取組の推進、子供の思いや願いの実現に向けた子供主体の生活科の授業改善が今後の課題である。
(6)今後の展開について
モデル地域の取組の持続可能な体制づくりやモデル地域の取組を基にした市内全域における取組の展開を図っていく。
(7)その他
委員からは、小1サポーターの詳細について、教員の意識改革について、取組の保護者への発信について、取組が必要と感じた理由について、取組を始める際の行政内部の反応について、取組に携わっている職員数について、予算について、取組の年間計画が作成できた経過について、課題の解決策について、各保育園・幼稚園で差があるが、取組を進めるに当たり努力した点について、発達障害のある子供に対する支援について、取組による子供の思考力の向上について、小1サポーターの従事時間について、各学校独自で自由に使える予算はあるのかについて、不登校児童・生徒数について、要録の様式の統一化について等の質疑がなされた。
「高知市視察の様子」
高知県(5月22日)
【調査項目】
高知家健康パスポートについて
『県の概要』
- 人口:65万9,155人(令和6年5月1日現在)
- 面積:7,104平方キロメートル
1.高知家健康パスポートについて
(1)概要について
県民の健康寿命の延伸を目的として、平成28年度から実施しており、「楽しみながらおトクに健康づくりを」をコンセプトに、運動の継続、健康的な食事など生活習慣の改善、健診受診等を推進している。
健康パスポートの目標は、働き盛り世代(40から60代)の死亡率の改善、県民一人一人の健康意識の向上と保健行動の定着化である。
健康パスポート取得者の特典としては、(1)参加施設で特典が受けられる、(2)取得者限定のプレゼントキャンペーンに参加できる、(3)市町村が実施する事業で特典が受けられる、(4)ランクアップの際、抽せんで賞品が当たる、(5)健康づくりに取り組んだ結果がポイントとして残せる、などがある。
なお、当初は紙媒体のみで運用していたが、令和元年度からは紙媒体とアプリの併用、令和4年度からはアプリのみで運用している。
(2)実施に至るまでの経過及び経費について
高知県では、働き盛りの男性の死亡者数が全国に比べて多く、男性の平均寿命・健康寿命が短い、血糖値の高い方が多いといった特徴や1日平均歩数・BMI平均値(男性)がワースト1位となるなどの現状が見られたため、働き盛りの男性に生活習慣の改善を働きかける必要があると判断し、健康パスポートの導入に至った。
導入当初の平成28年度から現在に至るまでに要した概算経費は、プロモーション費用で総額約1億9,485万円、アプリ開発・改修及び運用保守費用で総額約4,300万円となっている。
(3)利用者数について
紙媒体のみの運用であった導入当初の平成28年度は、パスポートの取得者数は1万732人であったが、令和3年度には紙媒体で5万688人、アプリで2万8,699件のダウンロードがあった。令和4年度からはアプリのみの運用となり、直近の令和5年度のダウンロード件数は5万3,419件となっている。
(4)成果について
BMIが適正値であるアプリ利用者の比率は令和5年10月時点で、男性70.3%、女性76.2%で、いずれも令和4年の県民健康・栄養調査結果(男性57%、女性69%)よりも高くなっており、アプリ利用者は適正体重を維持している割合が高知県の平均よりも高いという成果が出ている。
また、他の啓発事業と連携させることで具体的な行動変容につなげることが可能となり、県内の量販店・コンビニ、約250店舗と連携し、野菜関連商品にポイントを取得できるシールを貼り付けて野菜摂取を促すなどの取組を行うことで、実際に野菜の売上が伸びたという成果も出ている。
(5)課題について
利用者の割合が男性:女性=1:2であり、男性の利用者が少ないのが課題となっている。働き盛り世代に届きやすいよう職域と連携した取組により、男性へのアプローチ強化を今後進めていく必要がある。
(6)その他
委員からは、紙媒体からアプリに移行する際の議論について、アプリの利用率について、ランクアップ時の特典について、アプリの個人情報管理について、65歳以上の高齢者の利用者数について、健診結果が良くなったことに対するインセンティブについて、県内の全市町村がアプリを活用しているのかについて、アプリを活用している企業数について、中年世代に向けた今後の展開について、市町村が各種事業を実施する際に県は財政支援をしているのかについて、最もアプリを利用している年代について、ランクがマイスターになっている利用者の割合について、県民以外でも登録できるのかについて、アプリの管理・運用方法について、都市部と郡部での県民の意識の傾向について等の質疑がなされた。
「高知県視察の様子」