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宇治市議会(行政視察報告 令和6年度) 2
総務常任委員会の行政視察報告
年月日: 令和6年5月23日(木曜日)~5月24日(金曜日)
視察先: 広島市(広島県)、呉市(広島県)
出席委員:岡本委員長、西川(康)副委員長、西川(友)、坂本、関谷、金ヶ崎、佐々木の各委員
執行部: 畑下茂生危機管理監、貝康規総務・市民協働部長
広島市(5月23日)
【調査項目】
平成30年7月豪雨災害からの復旧・復興について
『市の概要』
- 市制施行:明治22年4月1日
- 人口:117万5,724人(令和6年4月30日現在)
- 面積:906.69平方キロメートル
1.平成30年7月豪雨災害からの復旧・復興について
(1)概要について
広島市の地域特性として、市街地は三方山々に囲まれた干拓や埋立てでできたデルタ地帯となっており、地震による液状化や津波による浸水のリスクがある。また、市街地には6本の河川が流れており洪水のリスクがある。平地部の割合が広島市全体の約17%となっており、平地部で人口を吸収できないことから、傾斜地への居住が進行している。地質については、後期白亜紀の花崗岩であり、水を含むと非常にもろく崩れやすくなっているため、山麓部では大雨による土砂崩れや土石流を含む災害が発生しやすくなっている。土砂災害警戒区域等の件数については、広島市では約4万7,000箇所が土砂災害警戒区域等に指定されており、全国で最も多くなっている。こうした災害が発生しやすい地域特性を持った広島市では、平成26年8月豪雨災害を受けて本格的な取組を開始しており、平成30年7月豪雨災害では、災害における避難対策等検証会議を設置して、会議での検証結果を基に住民が災害を「我がこと」として認識することを最重視した防災対策を実施している。
(2)平成30年7月豪雨災害からの復旧・復興に至る経過について
平成26年8月豪雨災害では、避難対策等検証部会を設置し、広島市が実施した避難対策等について検証が行われた。検証結果を基に、適切な避難情報の発令及び伝達を行えるよう、防災情報共有システムの構築、避難情報の発令基準の明確化及び防災まちづくり事業の充実強化の取組を行った。
平成30年7月豪雨災害では、適切な避難情報の発令及び伝達を行ったものの多くの被害が出たことから、市が発令する避難情報を受け取った住民側の受け止めと、それに基づく避難行動の在り方が課題となった。広島市は、避難対策等検証会議を設置し、避難情報の発令及び伝達を受けた側の住民避難行動と地域住民の置かれた状況や問題意識との関連性について、避難行動についての住民アンケート等を基に検証を行った。会議において、住民自らが災害の危険性を「我がこと」として認識することが極めて重要であることや、避難行動については地域コミュニティーの役割が大きいといった提言がなされた。
(3)主な取組について
平成30年7月豪雨災害の検証結果を踏まえ、避難誘導アプリの導入、防災体験学習の実施及び防災カメラの設置支援の3つの取組を開始した。
避難誘導アプリは、避難場所等への案内機能や避難情報等を通知する機能を持ったものである。利用者の現在地に避難情報が発令された際、プッシュ通知で避難情報や開設中の最寄りの避難所へのルートなどを確認できる。
防災体験学習では、子供達を対象に、地域の災害リスク、避難経路及び避難場所等の確認や、災害時における避難生活の疑似体験などを行う防災体験学習を実施している。広島市が養成した地域の防災リーダー(防災士)をアドバイザーとして派遣し、次世代を担う子供達を対象として、防災意識の向上を図るための学習活動を支援している。
防災ライブカメラの設置支援については、過去に土砂災害や洪水が発生したことがある場所や、地域で把握している危険な場所の状況を、スマートフォン等で確認できる防災カメラの設置に係る経費を支援している。初年度はカメラ等の機器の購入等に30万円を上限に補助している。2年度目はインターネットの通信料や電気代に4万円を上限に補助している。
その他の避難情報の周知及び伝達の取組として、防災情報のメールでの提供、防災情報をインターネット上で確認できるサイトの導入及び土砂災害危険度情報の高解像度化を行っている。
(4)今後の課題と取組について
避難誘導アプリの課題として、ダウンロード数の伸び悩みがある。今後は、利用者促進を図るため、利用者の使いやすさや機能を改善していく必要がある。また、自治会や地域で実施する防災訓練等で活用できるような訓練機能及び防災学習機能などがないため、これらの機能拡充や更新について検討している。
避難情報を発令するだけでは必ずしも避難行動につながらない。災害は身近に起こり得るものという認識を持つことが重要である。今後とも、避難誘導アプリ等を利用し一人一人に切迫感のあるリアルな情報提供を行っていく。
また、近隣住民などの動向も避難行動への判断材料となることから、地域コミュニティーの役割が重要であり、地域コミュニティーの防災力の向上をサポートする取組を続けていく。
(5)その他
委員からは、学区を中心とした町内会で防災の取組をしているのかについて、防災体験学習の内容について、広島市の取組に対する市民の反応について、傾斜地に居住することへの対策について、近隣住民間で助け合える体制が構築されているのかについて、町内会単位での避難者情報の確認方法について、町内会の防災対策等への支援について、防災リーダーの年代について、防災マップの内容について、危機管理室の体制について、避難誘導アプリの導入期間、ダウンロード数の推移、開発業者、開発費用、運営自治体及び機能拡充予定について、平成26年8月豪雨災害と比較して平成30年7月豪雨災害では被害が減少したのかについて、消防等との連携について等の質疑がなされた。
「広島市視察の様子」
呉市(5月24日)
【調査項目】
ゆめづくり地域協働プログラムについて
『市の概要』
- 市制施行:明治35年10月1日
- 人口:20万3,553人(令和6年4月30日現在)
- 面積:352.83平方キロメートル
1.ゆめづくり地域協働プログラムについて
(1)概要について
呉市には、地区自治会連合会等が中心となって構成しているまちづくり委員会・協議会がある。呉市とまちづくり委員会・協議会が協働して、地域力の向上及び小さな市役所の実現に向けて取り組んでいる。呉市としては、まちづくり委員会・協議会に対して、自立した包括的な地域経営を行うために組織を活性化してもらいたいと考えている。そのための支援策としてまとめたものが「ゆめづくり地域協働プログラム」であり、平成20年度から実施している。
(2)ゆめづくり地域協働プログラムの作成に至る経過及び目的について
特色ある地域資源を最大限に活用した「自主的で自立した地域活動」は、これからのまちづくりの中核をなすものであり、そのためには、地域の自主的で自立した活動の構築を図る必要がある。呉市では、昭和40年代以前の地域コミュニティーを中心とした「地域自治」の復活を目指しており、そのために、地域力の向上(コミュニティーの自立経営)及び小さな市役所の実現(協働型自治体への移行)の2つを目標に設定している。
(3)主な取組について
「ゆめづくり地域協働プログラム」として下記の5つの施策を実施している。
1.住民自治を促進する基本ルールの整備
地域まちづくり計画の策定・改定支援を行っている。地域まちづくり計画は平成21年度末をもって、市内すべてのまちづくり委員会等(28団体)において策定されており、現在は、まちづくり委員会等と協議しながら改定の支援を行っている。
2.市民公務員の育成
市民視点を持った協働型職員の育成として、本庁管内の地域担当職員制度、市民公務員研修及び職員の地域グループ化の推進の3つの取組を行っている。
3.地域力向上のための財政的支援
ゆめづくり地域交付金の交付、市民公益活動支援基金の設置、地域パートナ―シップ支援事業及び災害時協力井戸共助利用支援事業を行っている。
4.地域力向上のための活動拠点確保
まちづくりセンターの余裕スペースを活用し、地域内各種団体が活用できるフリースペースを確保している。
5.地域力向上のための人材育成
自治会の後継者不足が課題となっている中で、地域の人材育成をするために、まちづくりサポーター制度、地域おこし協力隊活用事業、圏域まちづくり大学事業及び地域デビュー応援講座の4つの取組を行っている。
(4)今後の課題と取組について
平成30年度に行った自治会向けのアンケートによると、自治会長の61%が70歳代以上、94%が60歳代以上であり、7割を超える自治会から後継者が不足しているという回答を得ている。こうした実情を踏まえ、今後は地域の人材育成に特に力を入れていく必要がある。また、地元企業で働いている人たちも巻き込んで地域を活性化していければと考えている。
(5)その他
委員からは、「はたちの集い」等の開催主体について、取組の効果と今後の展望について、取組による若者の社会動態の変化について、企業及びNPO等による地域との関わりについて、市民公務員の位置づけについて、市民公務員による情報漏えいへの対策について、まちづくり委員会・協議会の立ち上げについて、地域まちづくり計画の根拠法令について、まちづくり委員会・協議会の規模について、まちづくり委員会・協議会による協議の開催場所及び回数について、まちづくり委員会・協議会への支援金の管理について、各地区と議員の関わりについて、呉市で予想される災害について、自主防災組織について、まちづくり委員会・協議会を構成している組織間で会議等をしているのかについて等の質疑がなされた。
「呉市視察の様子」