本文
宇治市議会(行政視察報告 令和5年度) 8
建設・水道常任委員会の行政視察報告
年月日: 令和6年1月18日(木曜日)~1月19日(金曜日)
視察先: 小田原市(神奈川県)、熱海市(静岡県)
出席委員: 鳥居委員長、服部副委員長、大河、堀、加勢の各委員
小田原市(1月18日)
【調査項目】
歴史まちづくりに係る取組について
『市の概要』
- 市制施行:昭和15年12月20日
- 人口:186,326人(令和5年12月末現在)
- 面積:113.60平方キロメートル
1.歴史まちづくりに係る取組について
(1)概要について
小田原市固有の歴史的風致を守り育て、後世に伝え、小田原らしいまちづくりを推進するために平成23年度より小田原市歴史的風致維持向上計画(第1期)を策定し、一定の成果があった。これを受けて、令和3年度より小田原市歴史的風致維持向上計画(第2期)を策定し、公民連携による面的な歴史まちづくりの推進に向けて、市所有の歴史的建造物の利活用に民間提案制度を活用するなど、さらなる取組が行われている。
(2)経過と目的について
1.経過について
小田原市には、戦国時代には「城下町」として発展し、江戸時代には「宿場町」として栄え、明治期には財政界人や文化人たちの「別荘、居住地」として愛されてきた歴史的風致が存在している。
これらを後世に伝え、小田原らしいまちづくりを推進するために平成23年度に小田原市歴史的風致維持向上計画(第1期)が策定された。
取組として、歴史的建造物の整備・公開やNPO法人への運営委託、講演会、建物内ガイド、電線類の地中化等が行われた。
2.目的について
観光入込客数の増加、地域の歴史まちづくりの活性化などの一定の成果があったものの、課題として観光入込客数が横ばいの建造物が一部あり、さらなる取組が必要とされていた。
令和3年度には小田原市歴史的風致維持向上計画(第2期)を策定し、公民連携による面的な歴史まちづくりの推進に向けて取組を行っている。
(3)主な取組について
-
種別
取組
主な内容
ハード
燃市有の歴史的建造物の民間事業者への貸付※
・豊島邸の飲食店への活用
・清閑亭の飲食店への活用
ハード
民間事業者による運営管理
・皆春荘
・旧松本剛吉別邸
ハード
外観改修助成
・景観形成に寄与する外観改修を助成し、促進している
ソフト
職人育成研修等推進事業
・地元の高校生の生徒や職人が参加し、街なかの物件を題材に伝統工法を学習
ソフト
歴史的まちづくりカードの配付
・歴史的建造物のカードを作成し配付
ソフト ゲームとの連携
・歴史的建造物をゲームのスポットに
ソフト 民間団体等の取組
・まちづくり団体による山車小屋や神輿庫の修景
・空き家、空き店舗利活用の促進
ソフト 景観形成
・景観計画重点区域では、より厳しい制限を設け規制
※市有の歴史的建造物の民間事業者への貸付
民間事業者に市有物件の有効活用をテーマに提案を求め、土地建物貸付を行う。提案内容は地域課題の解決、まちの魅力向上、生活の質の向上等として幅広く募集する。貸付によって得る賃借料を歴史的建造物の維持費用に充てる。同制度を活用している豊島邸では年間約180万円の賃借料を庭園整備費に充当している。豊島邸の民間貸付のスケジュールは以下のとおり。
時間 | 内容 |
令和4年 6月 |
募集要領公表 |
令和4年 9月 |
提案受付 |
令和4年10月 |
採用提案公表 |
令和4年11~1月 |
詳細協議 |
令和5年 2月 |
賃貸借契約・「豊島鰻寮 一月庵」として開業 |
(4)その他について
委員からは、市有の歴史的建造物の民間事業者への貸付を公募型のプロポーザルから民間提案制度に変更してから応募の数が増えた理由について、民間事業者へ貸付けた後に売上げが芳しくない場合には補助を行うのかについて、市で歴史的建造物を買い取る判断をした理由について、各部署の関わりについて、建物の外観改修にかかる補助の要件について、景観アドバイザーは市の職員なのかについて、小田原城は市の所有なのかについて、観光入込客数が令和4年に大きく増えた理由について、豊島邸と清閑亭の民間事業への貸付決定後の事業のスピードの違いについて、東京の事業者からの提案はなかったのかについて、風致地区の制限について等の質疑がなされた。
「小田原市視察の様子」
熱海市 (1月19日)
【調査項目】
スポーツ振興くじ助成を活用した公園整備について『市の概要』
- 市制施行:昭和12年4月10日
- 人口:33,934人(令和5年12月末現在)
- 面積:517.72平方キロメートル
1.スポーツ振興くじ助成を活用した公園整備について
(1)概要について
熱海市の所有する姫の沢公園スポーツ広場はグラウンドに人工芝を敷設してから10年以上が経過しており、人工芝の劣化や路盤の不陸が広範囲で発生していた。安全面の確保においても早急に対応する必要があると判断したことから、平成30年度にスポーツ振興くじ助成金を受け、10,242平方メートルの不陸を補正し、人工芝への張替を含む人工芝改修工事を行い、安全な競技環境を提供できるようになったとともに、利用者も快適にプレーが行えるようになった。
金額としては補助対象事業約4,600万円に対し2,400万円が助成された。
助成を受けた後は、現地にスポーツ振興くじ助成金を受けて整備したことを示す看板を掲示する必要がある他、日本スポーツ振興センターのホームページに同助成金を受けた事業として掲載される。
参考:姫の沢公園スポーツ広場に掲示されている看板
(2)経過について
熱海市の所有する姫の沢公園スポーツ広場は、熱海市内で唯一の人工芝グラウンドで、サッカーやグラウンドゴルフを中心に世代を問わず多くの方が利用しており、観覧席や更衣室、シャワー室も完備しており、様々な大会やイベントが開催されている。市内住民にとどまらず市外からも利用者が訪れていて、特に休日は利用希望の団体が絶えず、稼働率の高い施設となっていた。
しかし、グラウンドに人工芝を敷設してから10年以上が経過しており、人工芝の劣化や路盤の不陸が広範囲で発生しており、部分的に修繕を行いながら利用していたが、利用者から改修してほしいと度々要望があがっており、安全面の確保においても早急に対応する必要があると判断した。
改修に当たり市の単費だけでは負担が大きいため、活用できる助成事業を探し、スポーツ振興くじ助成金を活用し整備を行ったもの。
(3)助成金について
1.金額について
人工芝改修工事にかかる費用は約4,600万円であったが、対象事業としては1件あたり4,000万円が上限である。補助金の限度額は、その4分の3の3,000万円となる。実際の補助額としては審査の結果がA判定であれば10割、B判定であれば8割の助成となる。審査の結果B判定であったため、2,400万円の助成となった。
2.手続きについて
改修の前年となる平成30年1月に申請手続きを行い、4月に交付決定となった。その後に工事を施工し、実績報告を行い、審査の結果として金額が決定し、入金がされた。
(4)その他について
委員からは、スポーツ振興くじ助成を利用することによる制限やデメリットはあるのかについて、賭け事に関連した助成を受けることへの批判はないのかについて、指定管理者の収支状況について、利用状況とその課題について、子供の利用が中心なのかについて、同助成事業に係る審査は誰が行うのかについて、助成金の算定について、自治体レベルの申請なら助成対象になりやすいのかについて、申請から入金までは1年以内であったのかについて、夜間照明設備は設置しないのかについて、大学の合宿の誘致状況について、別に整備したバスケットゴールの助成額について、熱海市は同助成事業を3回申請して3回とも交付決定されているのかについて、指定管理者が替わることで市民サービスの質は上がったのかについて、指定管理者「姫の沢公園パートナーズ」における代表企業である伊豆箱根鉄道の役割について、東京の会社である西武造園を構成企業として含む指定管理者を選定することに対して地元の造園業者や市民から批判はなかったのかについて等の質疑がなされた。
「熱海市視察の様子」