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宇治市議会(行政視察報告 令和5年度) 5
産業・人権環境常任委員会の行政視察報告
年月日: 令和5年8月29日(火曜日)~8月30日(水曜日)
視察先: 氷見市(富山県)、越前市(福井県)
出席委員:中村委員長、角谷副委員長、松峯、山崎、徳永、稲吉、藤田の各委員
氷見市(8月29日)
【調査項目】
SDGs未来都市について
『市の概要』
- 市制施行:昭和27年8月1日
- 人口:4万3,588人(令和5年7月1日現在)
- 面積:230.54平方キロメートル
1.SDGs未来都市について
(1)概要について
SDGsは2015年9月に国連サミットで採択された持続可能な開発目標であり、17の目標について人類及び地球の持続可能な開発のため、2030年までに全世界が達成すべき課題とその具体的な目標である。これを受けて国は、2020年に地方創生とSDGsを組み合わせた第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を改訂した。地方創生SDGsの実現などの持続可能なまちづくりを柱として、そのために地方創生SDGsの普及促進活動、モデル事例の形成、官民が連携できる地方創生SDGs官民連携プラットフォームの形成及び資金面で地方創生SDGs金融の促進が総合戦略で書かれている。また、その後政府からデジタル田園都市国家構想基本方針が出され、その中でもSDGsの理念が取り込まれた。
地方創生SDGsの推進の柱としては、経済、社会及び環境の三側面をうまく統合した施策を推進していくとしており、地方創生の目標である人口減少と地域経済縮小の克服、まち・ひと・しごとの創生と好循環の確立につなげていくというのが、地方創生SDGsの考え方である。
SDGs未来都市について、国への提案が認められると、SDGs未来都市に選定され、内閣総理大臣から選定書が交付される。それと併せて、その中から各年度モデル事業として10件が選ばれることになっている。これは、SDGs未来都市に選定されるだけではなく、モデル事業に選ばれないと国からの補助金は受けられない。なお、補助金の上限は2,500万円となっている。その内訳としては、計画策定、事業実施体制の構築及び普及啓発活動などに1,500万円(定額)、外注費及び委託料などに1,000万円(補助率2分の1)となっている。
(2)経過と目的について
国が創生総合戦略にSDGsの理念を盛り込んだ改訂をしたため、氷見市においても、SDGsの考え方を取り入れた第2期氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定した。SDGsが掲げる17の目標と第2期氷見市まち・ひと・しごと創生総合戦略に掲げる各施策の方向性が一致しており、この17の目標をゴールとして意識しながら、本市の総合戦略を推進することでSDGsの達成を目指すこととしている。
その後、令和4年度に令和13年度までの第9次氷見市総合計画を策定した。
この総合計画についてもSDGsの考え方を取り入れた施策を推進しており、目指す都市像を実現するための4つの基本目標として、住みたいまち・働きたいまち・育てたいまち・市民とともにつくる持続可能なまちを掲げている。
この4つの基本目標について、例えば基本目標1の住みたいまちであれば、災害に強い安全・安心なまちづくりに向けて、どのようなゴールを目指すのかということも記載している。
この総合計画策定後に、SDGs未来都市を目指すことになり、氷見市SDGs推進協議会及び庁内のSDGs推進本部が組織され、どのような未来都市を目指していくのかについて検討することになった。SDGs推進協議会については、市内の各種団体の実務者に参加してもらいながら、3回の議論を重ねた後、内閣府への提案書をまとめた。提案全体のタイトルを、「美しい海と山がつなぐ“食都氷見”~人 自然 食 文化で輝く交流のまち~」として、全体計画の概要については、「ひみ寒ぶり」に代表される食、海から里山まで広がる豊かな自然、定置網漁業等の先人から受け継がれてきた歴史・文化など、本市ならではの良さを大きく花開かせながら、国内外との積極的な交流・連携を展開し、市民がふるさとに対して自信と誇りを持ち、心のゆとりと温かみを感じて、誰もが幸せに暮らせるまちを実現するとした。この提案書の考え方は、市の総合計画と同じであり、目指す方向性がぶれないように整理をするとともに、地方創生SDGsは経済、社会及び環境の三側面が融合していることから、それぞれ自治体SDGsに資する取組、情報発信及び普及展開性に整理した。
まず経済については、地域資源を活用した産業の振興を課題として、その解決策を地域産業の振興、地域産業の担い手育成、関係人口の創出・拡大及び魅力ある回遊地点・滞在地点の創出とした。
次に社会については、地域力の維持・向上と地域を担う人材の育成を課題として、その解決を地域文化の継承を通じた地域内コミュニケーション・世代間連携の維持・向上、出産・子育てしやすい環境の形成及び男女がともに活躍する社会の形成とした。
次に環境については、自然環境の保全とカーボンニュートラルの実現を課題とし、その解決策として、農林水産業と連携した森里川海をつなぐ体験型学習の推進、里海・里山景観の保全、循環型社会の推進及び脱炭素社会の推進とした。
また、それぞれの解決策に対する取組についても明記をした。SDGs未来都市に選定されたメリットについては、
1.市内で生活、活動する様々な個人、企業及び団体等にとってSDGsに向けて取り組むきっかけとなり、その課題解決の力が集まって相互に連携しながらより大きな力を生み出し、地域課題の解決や地方創生につなげることができる
2.「SDGs未来都市」というブランディング効果による本市の価値の向上
3.市民、企業及び各種団体等のイメージやモチベーションの向上及び多様な主体の交流等によるビジネスチャンスの創出
以上の3点と考えている。
なお、今回で6回目となる令和5年度のSDGs未来都市等の選定については、提案のあった37自治体のうち、SDGs未来都市には28都市が選ばれ、その中から自治体SDGsモデル事業10事業が選定されたが、氷見市はモデル事業については選定されなかった。
(3)主な取組及びその成果について
SDGs未来都市に選定されると、未来都市計画の策定が求められ、現在、内閣府との協議が終わり、公表に向け準備中である。その内容は原則として提案内容から変更できないため、選定されなかった「自治体SDGsモデル事業」の部分を削除し、その関連部分を修正した内容となっている。
また、SDGsの普及啓発等として、市だけがSDGsに取り組むのではなく、市民、企業及び団体等にもSDGsへの理解を深め、それぞれが行動に取り組むきっかけとなるよう、
・氷見市SDGsロゴマークデザイン募集・選定
・氷見市SDGs推進パートナーの募集
・氷見市SDGs未来都市スタートアップフェスタ(仮称)の開催
以上の普及啓発等を推進していく。
また、令和6年3月からは、ひみSDGs推進パートナー制度をスタートし、この制度を通して、登録のあった推進パートナーの自発的、自主的な取組を応援するとともに、推進パートナー同士の交流や連携などにも取り組んでいく。
(4)今後の課題と取組について
令和5年3月に実施した市民アンケート結果では、SDGsという言葉を知っているかについて、「はい」が67%、「いいえ」が31%だった。また、SDGsを実践しているかについて、「はい」が38%、「いいえ」が58%だった。今後の課題としては、SDGsという言葉を知っている人の割合を増やしていくとともに、SDGsという言葉を知っている人には実践してもらえるようにしたいと考えている。
(5)その他
委員からは、SDGsに取り組むことで市民にメリットがあるのかについて、市民アンケートの結果について、学校給食での食材の地産地消の割合について、地域の就農の割合について、ふるさと意識を高め、氷見市に戻ってきてもらえる施策があるのかについて、ごみの適正処理について、海洋ごみの処理に要する年間の経費について、地域ワークショップの実施内容について、地域ワークショップに参加する市民の募集について、市民が参加するワークショップ等の開催回数について、SDGs推進計画の協議の開始から策定まで早期にできた要因について等の質疑がなされた。
「氷見市視察の様子」
越前市(8月30日)
【調査項目】
紫式部プロジェクト推進協議会について
『市の概要』
- 市制施行:平成17年10月1日
- 人口:8万0,041人(令和5年7月1日現在)
- 面積:230.70平方キロメートル
1.紫式部プロジェクト推進協議会について
(1)概要について
紫式部を核として官民が連携し、県及び市の認知度の向上や魅力発信を図るため、市内の経済団体、源氏物語アカデミー、市民団体並びに県の観光連盟等が参画して、令和5年3月22日に紫式部プロジェクト推進協議会を設立した。大河ドラマ館の設置や紫式部の特別展の企画、都市部への積極的なプロモーション活動、市内の機運醸成のイベントの企画、新商品開発のための支援などを行っていく予定である。
事業の予算は3億6,100万円となっている。支出の部では、プロモーション・機運醸成費として約1億4,200万円を計上している。これは市役所が発信する情報が若い世代にも届く媒体を育てようと、V-Tuberを活用した取組となっている。
(2)新商品開発アドバイザー業務に係る公募型プロポーザルの概要と実施状況について
大河ドラマ「光る君へ」は女性の視聴者が多いと予想されることから、越前市に来訪された際に、女性にも楽しんでもらえる食べ物やお土産の商品開発のアドバイザーをプロポーザルで募集を行い、大河ドラマでは長野県上田市での実績や、いろいろな自治体での地方創生の取組で商品開発をしてきた事業者を選定した。今後、商品開発セミナー等の開催、開発相談、商品化及び販路開拓支援などを行って
いくことになる。
紫式部を活用した商品開発としては、毎年大河ドラマ関連の商品を開発し、販売している企業から講師を招き、セミナーを開催し約60社の参加があった。また、女性をターゲットにした商品開発支援として、先ほどのアドバイザー契約をした事業者がセミナーを開催し、約30社の参加があった。
(3)(仮称)光る君へ 越前 大河ドラマ館に係る公募型プロポーザルの概要と実施状況について
武生中央公園の催事場に大河ドラマ館、市の歴史展示及び物販スペースを設置する。開催期間は令和6年2月23日から12月30日までとして、25万人の入館者数を目標としている。大河ドラマ館の概算事業費は令和5年及び令和6年の2か年で3億円となっている。内訳としては、展示に1億円、運営管理誘客会場整備に1億8,000万円、光熱水費に2,000万円となっている。
(4)3市連携について
宇治市・越前市・大津市の3市連携共同ホームページによる情報発信を令和5年11月から開始し、周遊施策については来春から実施できるよう準備を進めている。
(5)今後の課題と取組について
今後の課題としては、武生市と今立町の合併により越前市が誕生して16年となるが、まだ知名度が低いことから、大河ドラマを契機に知ってもらいたい。また、ふるさとへの誇りということで市民を主体として、大河ドラマの放映と新幹線開業と併せて、このまちをさらに盛り上げていく機運を高めていきたい。さらに、新幹線の駅と武生駅が3キロほど離れることになり、市内の観光地へのアクセスや生活面においても、二次交通をどうしていくかということが課題である。
V-Tuber開発活用事業として、先進企業と連携した3Dモデルデータによるバーチャルタレント開発、バーチャルタレント運用、メタバース空間を活用したイベント等を実施し、若者をターゲットにしたさらなる市の認知度向上に取り組む。
(6)その他
委員からは、交通インフラについて、大河ドラマ館からその他の観光地への誘客について、地元特産品のPR方法について、紫式部公園でのイベント開催予定について、LINEスタンプの作成予定について、V-Tuber開発活用事業に係る費用について、平安ゆかりのキャラクターについて、ユーチューバーや観光大使への依頼について、市内の宿泊施設数について、紫式部まつりについて、大河ドラマ終了後のV-Tuberの活用について、越前国府発掘調査について、自転車で武生駅から武生中央公園までの所要時間と道路整備について、日野川のサイクリングロードについて、自転車を活用した市内の周遊観光について、3市の周遊観光について、武生駅前のテーブル及びベンチの設置目的について、ブランド戦略課の職員数について、ブランド戦略課で紫式部プロジェクトに従事している職員数について、大河ドラマの放映による観光などで見込んでいる経済効果額について、紫式部プロジェクトを観光誘客課ではなくブランド戦略課が担当している理由について、ブランド戦略課ができた経過について、シビックプライドに関するアンケートの実施について等の質疑がなされた。
「越前市視察の様子」