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宇治市議会(行政視察報告 令和5年度) 3
文教・福祉常任委員会の行政視察報告
年月日: 令和5年8月21日(月曜日)~8月22日(火曜日)
視察先: 大和市(神奈川県)、東大和市(東京都)
出席委員:木本委員長、今川副委員長、真田、宮本、谷上、渡辺、西川(美)の各委員
大和市(8月21日)
【調査項目】
おひとり様などの終活支援事業について
『市の概要』
- 市制施行:昭和34年2月1日
- 人口:243,252人(令和5年10月1日現在)
- 面積:27.09平方キロメートル
1.おひとり様などの終活支援事業について
(1)事業の概要及び主な取組について
1.相談支援については、終活コンシェルジュという一般職員を配置し、相談者の悩みの内容を整理して適切な解決法を指示するほか、解決できない場合は専門家につなげることを目的としている。また、なぜ専門職員ではなく一般職員が配置されているのかというと、市民は専門的な内容よりも取りあえず相談したいという思いで来ることが多く、専門職員にすると業務が属人的になってしまい、サービスの低下につながるおそれがあるためである。
2.専門家相談・遺品整理支援については、大和市は専門家として神奈川県司法書士会と連携し、選任された司法書士が初回相談料無料で市民の相談に応じている。また遺品整理支援については、亡くなったあとに遺品整理や遺品処分を行った場合、費用がどれくらい必要なのかを生前のうちに遺族と成り得る方に知ってもらう制度である。なお、この制度は生前契約できない。理由は二点あり、一点目は見積り以降亡くなるまでに物が増えていく可能性がある点、二点目は遺品の中に実は価値がある物も含まれており、執行する時に遺族と成り得る方に立ち会っていただき判断を委ねるためである。
3.終活支援登録については、登録カードを発行して事前に登録者である市民が市内の葬祭事業者と自分が亡くなったときにどのように葬儀、納骨をしてほしいかを確認し、履行をしてもらう生前契約を行う。契約した内容を市と葬祭事業者で情報共有を行い、万が一亡くなった場合、契約どおりに履行されているかどうかを市と葬祭事業者で確認し合う。
4.エンディングノートについては、遺言や死後事務委任契約といった形式的なものではなく、自分の人生はどのようなものだったのかなど、書きやすいことから書いていくことによって、自分の意志、最後の意志を残された方に分かりやすく伝えることができるのではないかという思いで発行し、市内の各施設に配架されている。なお、エンディングノートの中に広告を掲示することで製作費を賄っている。
5.終活クイズについては、終活の普及、啓発の一環で終活ニュースを発行していたが、コロナの外出規制で特に高齢者が外出できなくなると人との交流が希薄になることを懸念して開始したものである。この終活クイズの回答を市役所に送付すると、職員が添削をして記念品と一緒に返送をしている。特に足腰が弱い高齢者が自分で書いて送るというのが交流の手段となっており、楽しみにされている方も多く、好評である。
6.遺贈寄附については、過去に独り暮らしの高齢者の中に亡くなったあとは市に寄附したいという方がおり、そういう方から亡くなったあとに寄附する手続を行ってくれる人を見つけることができないという相談があった。このことについて、遺言執行者の指定を市に委託することで、おひとり様の遺贈寄附という思いをかなえるための協定を神奈川県司法書士会と締結している。対象となるのは、預貯金を市に遺贈寄附する意思があり、兄弟姉妹以外の相続人がおらず、遺言の内容を実行してくれる人がいない方である。遺言書に書かれた内容に基づき、市が遺言執行者となる司法書士を指定して、指定された司法書士が遺言書の内容に沿った手続を行い、市に寄附する仕組である。
(2)「大和市終活支援条例」の制定に至るまでの経緯について
令和2年12月に検討が開始され、令和3年3月、4月にパブリックコメントを実施し、令和3年6月に議会に上程され、委員会、本会議ともに全会一致で可決された。意図としてはコロナ禍で不安を抱えながら過ごしている高齢者に対して、これまでも事業として先行して終活支援事業はしてきていたが、要綱で実施しているものはいつでもやめられるという点があるので、一時的な支援ではない条例を制定することで腰を据えて支援していく意思を示すためである。
(3)職員に求められる知識について
特に資格は要さないが、インターネットに掲載されている情報などは知識として日々勉強していく必要がある。また、関係部署と意思疎通を図る必要性が高いことから関係部署と人をつなげる能力が必要である。
(4)市民や葬祭事業者などからの反響について
市民からの相談件数は年々増えており、出前講座でも多くの相談を受けている。令和5年度は7月までに130件の相談があり、この調子であれば過去最高の相談件数になると見込んでいる。葬祭事業者については、市が事業の内容を確認して承認した事業者を一覧にしてホームページに公開している。事業者からは登録に関する問合せも増えており、市の職員が事業者を訪問し、事業内容を確認した上で登録を行っている。
(5)事業に係る予算の内容ついて
令和5年度予算は167万4,000円で、主な内訳は講座、講師謝礼が10万円、冊子の発行に60万円、アンケート業務に関する切手代などの実費として40万円を計上している。
(6)今後の展開について
市民へのアンケート調査では終活に関心があるが実際の準備につながっていないことが判明したので、今後も最初の一歩を踏み出してもらえるような普及、啓発、支援が必要である。相談内容は、終活の各論、遺言、相続が多いので、これらについて的確に応えていけるようにしていかなければならない。終活はどこまで行政が関わるのかを適切に判断し、民間事業者との役割分担、本人が本来やるべきことを整理していく必要がある。
(7)その他
委員からは、終活の啓発は言いづらい面があると思うが現場の苦労について、民間でも同様のサービスを実施しているが行政の考え方について、遺言の内容や延命治療等にトラブルが発生した際の対応について、今後の課題について、終活に関する市民へのアプローチの仕方について、認知症が発症した際の対応について、市民は終活を前向きに捉えているのかについて、葬儀会社とは生前契約が可能で契約時に支払いをするのかについて、遺品整理をする人がいない借家人が亡くなったあとは家主が遺品整理を行うのかについて、ご遺族支援コーナーはおひとりさま支援施策の一環なのかについて、大和市の終活支援を受けている住所地特例有料老人ホームを利用中の人数について、終活支援の登録者数及び年齢区分について、予算は単費なのかについて、現在の終活支援の登録者数に対する予算規模は適正なのかについて、市はどれくらいの登録者数が必要だと考えているのかについて、市は個人の責任で終活を行ってほしいという立場なのかについて、おひとり様などの終活支援事業の発端について、事業を実施する中で想定以上の効果はあったのかについて、終活クイズの記念品について等の質疑がなされた。
「大和市視察の様子」
東大和市(8月22日)
【調査項目】
学校給食センターについて
『市の概要』
- 市制施行:昭和45年10月1日
- 人口:85,151人(令和5年9月30日現在)
- 面積:13.42平方キロメートル
1.学校給食センターについて
(1)学校給食センターの施設の概要について
元々学校給食センターは市内に2か所あった。それぞれ昭和42年、昭和48年に稼働されたもので、年数を経るにつれて個々食器の保管場所が必要となったことや施設の老朽化などの理由により、新しい衛生管理基準に適合した給食センターを建設し、平成29年4月に稼働を開始した。対象校は小学校10校、中学校5校、合わせて15校の小中学校に給食を配送している。食数は1日当たり約7,000食だが、施設の調理能力は1日最大8,000食、献立は小学校2献立、中学校1献立の合計3献立である。施設には調理の様子を見学できる窓を設置しており、給食を教材として活用し、食の大切さへの理解を深めるとともに、食育の推進をしている。
(2)学校給食センターの運営方法について
設置、運営は東大和市の公設公営(直営)方式で、学校給食の調理及び配送は事業者への委託方式である。なお、調理についてはプロポーザルで契約を行い、配送は調理とは別の事業者と契約している。
(3)運営に係る予算(人件費なども含む)について
1.調理、配膳委託業務費 2憶2,869万円
2.配送委託業務費 2,481万6,000円
3.職員人件費 2,474万7,000円
4.学校給食センター運営費 4億928万1,000円
5.給食食材費(私費会計)3億7,336万5,000円
なお、給食食材費は、昨今の食材料費の高騰を受け、 保護者の負担軽減を図るため、国の新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金を活用し、市から学校給食食材料費高騰対応助成金を交付している(4,878万8,000円)。上記の金額は、その助成金分を含む。
(4)配送に係る施設の設備 (運搬車両なども含む)について
1.運搬車両は、2トン積みロングボディーコンテナ車5台を使用し、1度にコンテナを6台搬送が可能で、コンテナを1台ごとに固定できる装置が備わっている。車両の荷台内の内張りは抗菌処理を施した材質としており、コンテナはステンレス鋼である。
2.配送施設は配送用のドックシェルターを3か所、使用済みの食器や食缶を格納したコンテナを回収するためのドックシェルターを3か所設けている。
(5)食中毒などの有事の際の対応マニュアルについて
東京都からの通知の内容に基づき、対応することとしている。また、市教育委員会で作成したフロー図により、東京都及び関係部署との連絡に関する体制を整えている。
(6)アレルギー対応について
食物アレルギーのある児童・生徒に対しては、アレルギー除去食を提供している。除去する食材は乳、卵、えび、かにの4品目で、乳のアレルギー除去食提供対象者のうち希望する児童・生徒に対し、牛乳・乳飲料は豆乳、乳入りのパンは乳抜きのパンのアレルギー代替食を提供している。アレルギーを一人一人対応していくと使用可能な食材がなくなってしまう懸念があるため、アレルギーがない食品を可能な限り選定し、全員が同じ料理を食べられるよう栄養士が工夫して献立を作成している。また、アレルギー除去食は、アレルギー食調理室で調理し、個別の専用容器に入れて配食する。配送時は学校ごとに専用のケースに入れて、コンテナの上に載せて配送する。なお、該当するアレルゲンが含まれる料理を誤食しないように、希望者には材料、使用量を詳細に記載した献立表を配布している。
(7)留意事項
太陽光発電システムを備えており、そのシステムで発生した電気は、通常使用する電気の一部として活用するほか、災害時にはセンター内の3か所のコンセントにより小型機器への充電に使うことができる。また、消滅型の生ごみ処理機を使用しており、食品残渣を最終的に水にまで分解して排出している。ガスについては災害時にも対応できるよう、非常用発電設備、 100立方メートルの受水槽、プロパンガス庫、プロパンガス用回転釜を備え、都市ガスが止まったときでもプロパンガスを使って調理ができ、都市ガスが使えるときは炊飯ラインでの炊飯も可能となっている。他には小中学生とその保護者が学校給食の調理体験と試食を行う催しを実施しており、問合せも徐々に増えてきており好評な催しとなっている。
(8)その他
委員からは、施設完成後の試行期間について、試行期間中に問題はなかったのかについて、食中毒などを想定して代替食を用意しているのかについて、小麦アレルギーの場合は弁当対応になるのかについて、アレルギー除去食を食している人数について、弁当で対応している人数について、アレルギー除去食は小中学校を含めた3献立に対応しているのかについて、小中学校は同じ献立で量を調整しているのかについて、小中学校の給食費の差について、配送が間に合わなかったことはあるのかについて、配送経路は委託業者に任せているのかについて、配送に関するリスクマネジメントについて、学校現場において給食を受け取る際の体制や研修及び動線確認等は行ったのかについて、配送委託業者及び調理委託業者の契約期間について、契約満了時に新規に入札した業者はあったのかについて、給食のアピールポイントについて、保護者や児童・生徒から今後に向けて要望は出ているのかについて、届いた給食は児童・生徒が各教室に運ぶのかについて等の質疑がなされた。
「東大和市学校給食センター視察の様子」