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宇治市議会(行政視察報告 令和5年度) 1
建設・水道常任委員会の行政視察報告
年月日: 令和5年7月27日(木曜日)~7月28日(金曜日)
視察先: 呉市(広島県)、福山市(広島県)
出席委員: 鳥居委員長、服部副委員長、大河、堀、西岡、加勢、秋月の各委員
呉市(7月27日)
【調査項目】
次世代モビリティ導入に向けた交通社会実験について
『市の概要』
- 市制施行:明治35年10月1日
- 人口:207,388人(令和5年7月末現在)
- 面積:352.83平方キロメートル
1.次世代モビリティ導入に向けた交通社会実験について
(1)概要について
呉市では国道・鉄道駅・港が集積している呉駅周辺地域全体を総合交通拠点として捉え、市全体の交通まちづくりの起点となる、次世代モビリティにも対応した機能整備を推進している。
こうした総合交通拠点を核とした交通まちづくりを推進するため、次世代モビリティ導入に向けた交通社会実験を継続的に実施し、導入を軸とした新たな交通体系の構築を目指すもの。
(2)経過と目的について
1.経過について
呉駅周辺において駅前広場は供用開始より40年を経過して老朽化しており、一般車両の送迎が不便であること等の機能不足という課題を抱えていた。また、同駅前で平成2年より営業していたそごうが平成25年に閉店し、以降跡地活用の目途が立たない状態であった。
令和2年9月に国と呉市において、「国道31号線等 呉駅交通ターミナル整備事業計画検討会」を開催し、令和3年4月に国の直轄事業として「一般国道31号 呉駅交通ターミナル整備」事業が採択され、呉市の費用負担はない形で駅前広場等の再開発が行われることとなった。
2.目的について
同開発において、駅前広場を2階建てとし、1階は一般車両、2階は市民用デッキ広場とするが、2階のデッキ広場に乗り入れる次世代モビリティ(自動運転等)を活用して、市役所やれんがどおりなどが立地する北側市街地エリア、高い集客力を持つ大和ミュージアムが立地する宝町エリアとの回遊性の向上を促進する。
次世代モビリティの将来の導入に向けて、次世代モビリティの導入に係る課題(市民への周知、一般交通への影響、自動走行の品質向上、デッキ上における安全走行に向けた検証等)解決のため、交通社会実験を継続的に実施するもの。
(3)主な取組について
1.これまでの実績及び今後の予定
-
年度
車両
主な内容
令和元年
燃料電池バス
(水素バス)
・次世代モビリティ導入への機運醸成
・非常電源機能の体験
令和2年
自動運転バス
・自動運転車両が市街地走行するための課題抽出
・一般交通への影響検証
令和3年
-
【自動運転車の走行環境整備に向けた調査検討】
・電波調査、道路側からの支援検討等
令和4年
自動運転バス
【自動運転車の走行環境整備(磁気マーカ設置)】
・自動運行補助施設(磁気マーカ)効果検証等
令和5年
自動運転シャトルバス
(予定)
・回遊性向上実証実験(呉駅~れんがどおり)
・デッキ上における安全走行に向けた検証
2.実証実験結果及び環境整備等について
令和元年度:燃料電池バス(水素バス)実証実験
明らかとなった課題
・生活拠点であり観光拠点のれんがどおりの通行は、車両のサイズ等の検討が必要。また、安全性を確保するため、れんがどおりを横切る道路の在り方をセットで議論する必要がある。
・水素自動車の導入に当たっては、安定的に燃料が供給できる固定式の水素ステーションの環境を整備する必要がある。
令和2年度:自動運転バス実証実験
明らかとなった課題
・沿道に高層建築物がある区間ではGPS感度が低下。
・路上駐車車両を避けるため、手動介入(運転手が一時的に運転を行うこと)が発生。
令和3年度:自動運転車の走行環境整備に向けた調査検討
検討した主な走行環境整備
・GPS感度低下対策として道路付属物として磁気マーカを使用する。
・信号との連携として4G/LTEにて信号機の情報を車両に共有する。
令和4年度:EV自動運転バス実証実験
実験結果
・磁気マーカの設置により令和2年度の実験時と比較して走行時のブレが少なく、設定した軌跡を追従した。
・乗客アンケートにおいて、横断歩道を渡る際に自動運転車が来たら不安を感じるかとの問いに、令和2年度は不安を感じると回答が約7割であったが令和4年度は約5割に減少した。
(4)その他について
委員からは、駅周辺の公共交通について、次世代モビリティ活用のきっかけについて、利用者の想定について、グリーンスローモビリティの1日当たりの運行本数について、グリーンスローモビリティの停留所を設けたのかについて、グリーンスローモビリティの今後の実験の予定について、グリーンスローモビリティの実験の走行距離について、グリーンスローモビリティの今後の活用予定について、完全に無人の自動運転が実現する可能性について、将来的にはオンデマンドでのグリーンスローモビリティの導入を想定しているのかについて、自動運転車両及びシステムの導入に必要な費用について、高齢者の移動手段に係る施策について、オンデマンド交通の予約の取り方に係る考えについて等の質疑がなされた。
「呉市視察の様子」
福山市 (7月28日)
【調査項目】
AIを活用した市道点検・補修について
『市の概要』
- 市制施行:大正5年7月1日
- 人口:458,677人(令和5年7月末現在)
- 面積:517.72平方キロメートル
1.AIを活用した市道点検・補修について
(1)概要について
道路管理者(国・県・市)や公安委員会が管理する路面標示は、車、自転車、歩行者に対して、道路交通に必要な案内、誘導、警戒、規則等を道路の路面に線、文字、記号で標示するものであり、交通事故や転落事故などの防止に効果があり、道路管理者は主に外側線、中央線(白色)、車線境界線等を管轄している。
交通環境においてその重要性が増す一方で従前の手法における課題を解決する手法として、カメラ等を搭載した車両を走行させ、路面標示の状態を静止画及び動画で撮影し、取得した静止画は、AI(人工知能)を活用して区画線の劣化状況を診断し、一定以上の劣化が確認される箇所を対策箇所として抽出する。この取組により区画線の劣化の度合いを素早く、かつ定量的に診断することが可能となったもの。
(2)経過について
全国的に75歳以上の高齢運転者に起因する交通死亡事故の割合が増えてきている中、車載カメラにより道路上の車線を検知し、車線からはみ出しそうになった場合には運転者に警告する、といった機能を備えた「安全運転サポート車」の普及を政府が推奨しており、路面標示の重要性が高まりつつある。
しかし、路面標示の修繕に関する課題として、舗装と比較すると劣化の進行が早く、耐用年数が短いこと、人間が現場で目視により劣化状態を確認するため数値化して定量的な評価を行うことができなかったこと、膨大な延長の路面標示の調査とその取りまとめに非常に多くの市職員の労務を必要としていたことがあった。
ついては、新たな手法の検討を行う中で、AIを活用した市道点検・補修を選択したもの。
(3)主な取組について
1.AIを活用した点検について
「ROAD VIEWER(ロード ビューアー)」という道路区画線健全度診断システムを使用することで、車内にスマホをセットし、撮影開始ボタンを押すだけで、設定した間隔で自動撮影され、一般車両と同じ速度帯で調査が可能となっている。また、撮影後に同システムにおいて摩耗率(剥離度)の解析が行われ、塗り替えの必要性が診断される。なお、劣化診断の際には「路面標示と交通安全(一般社団法人 全国道路標識・標示業協会)」を参考として、路面標示のかすれ具合を評価する。
本業務は宮川興業株式会社を受注者として、区画線調査業務を一般競争入札により委託している。システムでの区画線調査を可能な業者は複数存在することが確認できたものの、文字や記号、横断歩道の診断が難しいという業者も一定存在したため、区画線調査のみを対象としたもの。
2.補修について
令和5年5月に「路面標示3か年集中対策方針」を策定し、主要な市道について、3か年で路面標示の集中的な更新を行うこととした。また福山市が管理する路面標示だけでなく、国・県・公安委員会が管理する路面標示を一体的に更新していくため、関係機関との連携体制を新たに構築し、対策を推進する。
(4)今後の展開や取組について
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令和5年 7月
現地調査、対策箇所抽出
令和5年 8月
関係機関との調整、実施箇所選定
令和5年10月
実施計画策定、対策実施
令和6年度
対策実施
令和7年度
対策実施
(5)その他について
委員からは、今後は法定外表示や道路標示もAIを活用した点検の対象にしていくのかについて、今後の活用方法について、本事業にかかる予算について、使用しているシステムを買い取る場合の費用について、来年・再来年は主要な道路に対して継続して点検を行うのかついて、どれくらいの箇所を補修していくのかについて、来年・再来年の補修のための予算措置はどうしていくのかについて、補修予算は単費なのかについて、国・県・公安委員会との連携について、発案は道路整備課なのかについて、福山市が設置する土木常設員は土木に関する専門的な知識がある方なのかについて、宮川興業以外のシステムはやり方が異なるのかについて、システムごと買い取るのではなく業務委託とすることのメリットについて等の質疑がなされた。
「福山市視察の様子」