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宇治市議会(行政視察報告 令和元年度) 7

印刷ページ表示 更新日:2019年11月5日更新 <外部リンク>

建設水道常任委員会の行政視察報告

年月日: 令和2年1月30日(木)
視察先: 菰野町(三重県)
出席委員: 稲吉委員長、秋月副委員長、真田、服部、山崎(恭)、山崎(匡)、西川(康)の各委員

菰野町 (1月30日)

【調査項目】

  • 菰野町MaaS「おでかけこもの」について

『町の概要』

  • 町制施行:昭和32年1月15日
  • 人 口: 4万1,702人(令和元年11月末日現在)
  • 面 積: 107.28平方キロメートル

1.菰野町MaaS「おでかけこもの」について

  1. 菰野町の地域公共交通の現状と課題について
    ◆1 菰野町の概要
     三重県北部に位置する県内人口最大の町で、ここ10年では世帯数は増加傾向にある。県内最大の市、四日市市に隣接し、中部地区の中 心都市、名古屋市までは約40km(鉄道・高速バスで約50分)である。平成31年3月に新名神高速道路の三重県内区間が全線開通し、菰野ICが設置された。
     都市計画区域内では、町面積の約19%が農地を占め、宅地としての土地利用は約10%となっている。町の南部に鉄道駅が4駅あり、その周辺に約40%の町民が居住。公共施設も南部に多数が存在している。
     東側の東西約6km、南北約10kmのエリアに集落が点在し、集落間には農地が広がっている。西側は鈴鹿山脈(国定公園)で山林となっている。
     鈴鹿山脈の主峰である御在所岳などを初め、年間約250万人の観光客が訪れている。 

    ◆2 菰野町の公共交通の現状
    ・鉄道:近畿日本鉄道湯の山線。朝・夕は15分間隔、日中は20~30分間隔の運転。
    ・路線バス:三重交通株式会社の4路線。 1路線は四日市市と町北部を結ぶ地域間幹線系統バス、1路線は観光客輸送路線。2路線は町と 名古屋駅を結ぶ高速バス。
    ・タクシー:有限会社尾高の車両15台。
    ・コミュニティバス:町による運行7路線。民間事業者の複数の路線バスが撤退したことに伴い、町内福祉施設や基幹病院への高齢者の移動手段として運行していた福祉バス(無 料)を再編し平成16年より運行開始。
    ・オンデマンド交通:町による運行(菰野町のりあいタクシー)。タクシー型の車両を使用した事前予約制。低頻度・多路線のコミュニティバスの運行効率向上を図るため運行開始。乗降場所から乗降場所まで乗車でドア・ツー・ドアではない。
    ・公共交通空白地有償運送:社会福祉協議会による運行(あいあい自動車)。
    ・ロープウェー:御在所ロープウエイ株式会社。観光客輸送で年間約53万人の利用がある。

    ◆3 菰野町の公共交通の課題
    ・人口の6割が居住する町北部は集落が点在した公共交通不便地域となっており公共交通の充実を求める声が高い。
    ・町南部は鉄道駅などが住居に近接しており公共交通に対する満足度が高い。
    ・鉄道駅、基幹病院、保健福祉センター等が南部地域に存在しているため、町北部から町南部への移動手段の充実が求められている。
    ・午前中は通勤・通学輸送、続いて病院や保健福祉センターへの高齢者の移動が集中している。
    ・オンデマンド交通は午前の予約が集中することから、運行効率の向上が必要。
    ・オンデマンド交通は事前予約が必要であり、乗り合わせ等も考慮した運行を行う必要があり、予約・配車システムの見直しが課題となっている。
     
     町民の生活利便性と来訪者の移動利便性の向上を目的に、地域公共交通網全体をカバーするシームレスな検索・予約システムの作成及びオンデマンド交通の配車システムのAI化を行い、地域公共交通のニーズの把握とKPI向上を図るため、菰野町MaaS「おでかけこもの」に取り組むこととなった。
  2. 国土交通省の先行モデル事業の概要について
     国土交通省は、MaaS等の新たなモビリティサービスの推進を支援する、新モビリティサービス推進事業について、事業の熟度が高く、全 国の牽引役となる先駆的な取り組みを行う先行モデル事業として、今年度19事業を選定し、事業主体からの申請を踏まえ準備が整った15事業を対象に交付決定(第1弾)した。
     大都市近郊型・地方都市型として、「顔認証やアプリを活用するキャンパスMaaS及び医療MaaS実証実験(茨城県つくば市)」や「まちなか自動移動サービス事業実証実験(兵庫県神戸市)」など、地方郊外・過疎地型として、「こもののおでかけをMaaSで便利にするプロジェクト(三重県菰野町)」や「定額タクシーを中心とした過疎地型Real MaaS(島根県大田市)」などが、観光地型として、「会津Samurai MaaS プロジェクト」や「八重山MaaS化事業(Phase1:観光型MaaS構築に向けた実証実験)(沖縄県八重山地域)」などがある。
     なお、MaaSとは「Mobility as a Service」の略で「出発地から目的地まで、利用者にとっての最適経路を提示するとともに、複数の交通手段やその他のサービスを含め、一括して提供するサービス」とされている。

  3. 企業や大学との連携について
     MaaSプロジェクトは菰野町地域公共交通会議を主体として取り組んでいる。地域公共交通会議には交通事業者から三重交通株式会社(バス)、有限会社尾高(タクシー)、近畿日本鉄道株式会社(鉄道)、御在所ロープウエイ株式会社が、学識経験者からは名古屋大学大学院環境学研究科が参加しており、地域代表や運輸支局、警察、道路管理者(三重県)と共に従前から連携している。
      昨年8月に株式会社NTTドコモと連携協定を結び、経路検索システム「おでかけこもの」の開発やデマンド交通のAI運行システムの検討など、ICT技術による支援を受けている。
      また、アクアイグニス(温浴施設)と提携し、アクアイグニス内における無人自動運転の実証実験も予定しており、将来的には公道での運用によるモビリティの向上にも期待している。

  4. 今後の課題と取り組み予定について
     令和2年1月15日からMaaSの実証実験を開始しているが、現行の予約システム(アプリ)は事前予約に対応できておらず、利便性を向上させるためにも早急にシステム改修する必要があり、NTTドコモと協議している。
     次年度以降はキャッシュレス決済システムの構築とサブスクリプション(定額制)を設定する予定であり、移動に付随するサービスを追加しMaaSシステムの付加価値を高める取り組みを検討していく。
     コミュニティバスのルートや時刻表の再検討、オンデマンド交通の乗降場所の再設定などにより、MaaSシステムのみならず、地域公共交通全体の利用促進を図る取り組みを続けていく。
     また、菰野町観光MaaS協議会を発足させたところであり、観光振興もあわせた取り組みの検討を進める予定である。

  5. その他
     委員からは、MaaSの利用状況について、コミュニティバスやオンデマンドタクシーの財政収支について、結節点や乗降場所の設定について、交通事業者における人手不足について、利用促進のアプローチや目標設定について、コミュニティバスの時刻表や町民からの要望について、路線の効率化や見直しについて等の質疑が行われた。


菰野町視察の様子
「菰野町視察の様子」