ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 ホーム > 紫式部ゆかりのまち宇治 > 【イベントレポート】五感で楽しむ古の文化講座〜「源氏物語」の雅楽曲-古い楽譜の解読と演奏[聴覚]

本文

【イベントレポート】五感で楽しむ古の文化講座〜「源氏物語」の雅楽曲-古い楽譜の解読と演奏[聴覚]

更新日:2024年2月13日更新 印刷ページ表示

登場人物の思いを代弁する雅楽曲!
耳で聞く『源氏物語』の雅やかな世界​

 令和5年11月5日(日曜日)に宇治市生涯学習センターで開催しました。イベント概要から当日の雰囲気、参加者の声をレポートします。

 この講座は”五感で楽しむ”をコンセプトに、平安時代の文化に触れる全4回の体験型講座です。これまでに「嗅覚」をテーマにしたオリジナル煉香(ねりこう)づくりや「味覚」をテーマにした平安時代のスイーツ・削り氷の試食体験を開催しました。今回テーマとなるのは「聴覚」。受講者のみなさんは講義や演奏を通じて『源氏物語』に登場する雅楽の世界を鑑賞しました。​

イベント概要

 『源氏物語』には、日本の伝統音楽である雅楽がまるで隠し画のように散りばめられています。たとえば第七帖の『紅葉賀(もみじのが)』では、光源氏がライバルである頭中将とともに「青海波(せいがいは)」という曲を舞う場面があります。時は紅葉のグラデーションが美しい10月のこと。光源氏の見事な舞を目にした桐壺帝は涙を流し、光源氏との密通に悩む藤壺はその舞の美しさに思わず心を乱してしまいます。こうした心の機微(きび)を、紫式部は敢えて言葉に表さず「青海波」の調べに込めているのです。

 そんな『源氏物語』の世界に登場する雅楽の魅力を学ぶ今回の講座。講師を務めるのは、京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター准教授の田鍬智志さん。日本の音楽史や民俗芸能の研究を行うだけでなく、実際に奏者として雅楽の演奏も行っています。

イベントの写真1

 前半に開かれた講義で田鍬さんは、そもそも雅楽が長い伝承の中で著しく「まのび」していることを指摘。「『チューリップ』がもし平安時代の雅楽曲にあったとしたら」と仮定して、実際にどれだけ「まのび」してしまったかをわかりやすく紹介しました。1000年の時を経た『チューリップ』があまりにもゆったりとしたテンポに変わってしまったことに、会場からは思わず笑い声がこぼれました。

イベントの写真2

  また、雅楽の演奏描写が豊富な『源氏物語』は、西暦1000年前後の雅楽を知るための資料としても大変貴重であることを評価しつつ、『源氏物語』が著された当時の楽譜集がほとんど伝存(でんぞん)されていないため、資料が豊富な平安末期~鎌倉時代の楽譜集をもとに『源氏物語』に登場する雅楽について解説が行われました。

イベントの写真3

 冒頭にご紹介した「青海波」をはじめ、第三十四帖「若菜(上)」で舞われる『納曽利(落蹲)』や第四十帖「御法」で披露される「陵王」などについて、演奏の描写や曲名そのものが登場人物の心の動きを暗示していることを説明。「当時の読み手は雅楽についての知識があったため、頭の中でメロディを流しながら読み進めていたようです」と紹介しました。

イベントの写真4 

 講義の後半では、田鍬さんらで構成する「でんおん管絃講」のメンバーが登壇。箏・琵琶を担当する田鍬さんをはじめ、高麗笛・龍笛パートの伊藤亜希子さん(フルート奏者)、三ノ鼓・笙パートの池内奏音(かのん)さん(作曲家)、琵琶を演奏する伊藤慶佑さん(作曲家)の4人のメンバーが、『源氏物語』に登場する雅楽を演奏しました。

イベントの写真5 

 当日参加した99名の受講者は、田鍬さんの話に熱心に耳を傾けながら、時にノートにメモをしたり、演奏のリズムに合わせてうっとりしたり、平安時代の雅やかな世界に酔いしれていました。

 イベントの写真6
 演奏後には、受講者の中から抽選で1名に龍笛がプレゼントされました。「まさか当選するとは思っていなかったので、大変驚きました。これを機会に、自宅で演奏にチャレンジしたいです!」と当選者の清原さん。

イベントの写真7 

 ご主人も「雅やかで美しい音楽に思わず聞き入りました」と笑顔で話されました。ぜひ、ご自宅で龍笛を吹いて、平安時代の雅やかな雰囲気を体験していただきたいですね。

イベントの写真8 

 同じく講座に参加した下村さんは「講師の田鍬先生の考察が大変興味深く、『源氏物語』を読む上で新しい見方を知った気がします」と話されました。他にも「初めて雅楽を聴いて、平安時代にタイムスリップした気分になれた」など、参加者の皆さんも大変満足したようです。

イベントの写真9

 「これまで国文学の視点から『源氏物語』の雅楽は語られてきましたが、当時の楽譜集などの資料が乏しいため、厳密には紫式部が生きた時代の雅楽がどのような調べだったのか分からないことも多いです。そこで今回は、紫式部より後の時代の平安末期・鎌倉期の楽譜集からひもといて再現しました。現在の雅楽とは異なる調べを体感していただければ嬉しい限りです」と田鍬さん。雅楽曲が収録されたCDもあるそうなので、ぜひ耳で聞く『源氏物語』の世界に酔いしれてみてはいかがでしょうか。

参加者

82名

その他ご感想

・はじめて生で雅楽の演奏を聞くことができた。『源氏物語』のどの場面にどんな雅楽が出てくるのか知ることができた。次回、『源氏物語』を読む時には雅楽についても注目して読んでみたい。

・昔の方が速かったというのは驚き。雅楽のイメージが変わった。偶然昨日読んだ本に、能楽が平安時代には現在の半分ほどの所要時間だったとあり、興味深かった。

・高校の国語教員をしているので、古典(古文)の授業の際に非常に参考になった。雅楽の曲調を理解していれば『源氏物語』をより楽しめると知ったので、今後、雅楽に親しんでいきたい。曲目と登場人物のキャラクターがリンクしているというのはとても参考になり、新鮮だった。雅楽の生演奏を間近で拝見・拝聴したのは初めてで、古典文学の世界観がイメージできた。

イベント概要

 『源氏物語』の雅楽曲-古い楽譜の解読と演奏-

 『源氏物語』に登場する雅楽に焦点を当てた連続講座の3回目。紫式部は、登場人物の内面を全て文章にせず、時に曲名や調性、楽器、曲調、旋律の動きなどに、キャラクターの性格・心情・思惑などを代弁させている。伝存する平安末期・鎌倉期の楽譜集を解読することで、できる限り紫式部が生きた時代の雅楽を味わおうという内容。

・講師 田鍬 智志さん(京都市立芸術大学日本伝統音楽研究センター)
・演奏 でんおん管絃講
・日時 令和5年11月5日(日)13:30〜15:30
・会場 生涯学習センター 第1ホール
・定員 先着100名 ※小学生以下は保護者同伴
・参加費 無料
・特典 抽選で1名に龍笛を贈呈


このページの先頭