ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
現在地 ホーム > 紫式部ゆかりのまち宇治 > 【イベントレポート】宇治市源氏物語ミュージアム特別企画展「このわたりに薫る君やさぶらふ」

本文

【イベントレポート】宇治市源氏物語ミュージアム特別企画展「このわたりに薫る君やさぶらふ」

更新日:2024年1月9日更新 印刷ページ表示

絵画や小説、女流歌人・作家の現代語訳を通じて知る『源氏物語』の魅力​

​ 紫式部によって描かれた『源氏物語』の舞台・宇治。市では、その歴史や文化、観光の魅力を多くの人に発信する「紫式部ゆかりのまち宇治魅力発信プロジェクト」を実施中です。

 今回は、同プロジェクトの一環として宇治市源氏物語ミュージアムで開催中の特別企画展「このわたりに薫る君やさぶらふ」を取材。展示されている原稿や資料などを通して、時代を超え愛され続ける『源氏物語』の魅力に触れることができました。

源氏M01

 1000年以上にわたって読み継がれる『源氏物語』は、ひとつの物語の枠を超え、絵画や工芸、芸能など広く影響を与えてきました。また多くの作家たちが源氏物語に魅了され、多彩な現代語訳も行われています。

源氏M02

 今回の特別企画展は、『源氏物語』のなかでも宇治が主な舞台となる「宇治十帖」をテーマに、江戸時代に描かれた屏風や画帖、版本、近現代に活躍した3人の女流歌人・作家による現代語訳を通して、『源氏物語』の魅力に迫る内容となっています。今回展示されている資料26件72点から、注目の展示をご紹介します。

源氏M03

 江戸時代初期の延宝元年(1673年)に、北村 季吟(きたむら きぎん)が著した『湖月抄』は、『源氏物語』の本文を全文掲載するだけではなく、登場人物の関係性がひと目でわかる系図や先行注釈なども入り、予備知識ゼロから『源氏物語』がよくわかるようになっています。『湖月抄』は後世にも大きな影響を与え、「もののあはれ」を提唱した本居宣長も『源氏物語』研究の際に参考にしたといわれています。

源氏M04

 こちらは、桃山時代から江戸時代初期にかけて活躍した土佐派の絵師・土佐 光則(みつのり)によって描かれたとされている『源氏絵鑑帖』です。『源氏物語』の各巻から一場面をピックアップし、色鮮やかな大和絵で表現しています。

源氏M05

 『源氏物語』の世界観が人々に浸透した江戸時代後期には、戯作者の柳亭 種彦(りゅうてい たねひこ)が、『源氏物語』を下敷きに舞台を平安時代から室町時代に移した『偐紫田舎源氏』(にせむらさきいなかげんじ)を出版。幕府によって発禁処分になるほどの大ベストセラーとなりました。光源氏に勝るとも劣らない才気と美貌を兼ね備えた足利 光氏(あしかが みつうじ)が、将軍職を狙う山名宗全を抑えるために大活躍するストーリーは、歌川国貞(三代豊国)による艶やかな錦絵も人気を博し、新たな源氏絵のジャンルとして定着しました。

源氏M05

 ほかにも、会場内には、『偐紫田舎源氏』をテーマにした寿古六(すごろく)なども展示。『源氏物語』がいかに庶民の間でも広まっていたかがよくわかります。

源氏M07

 明治時代に入り、『源氏物語』の現代語訳に挑んだ与謝野 晶子は、明治45年(1912年)の『新訳源氏物語』と昭和13年(1938年)の『新新訳源氏物語』の二度にわたって『源氏物語』の現代語訳を刊行しました。会場内には、『新訳源氏物語』『新新訳源氏物語』の書籍と、『新訳源氏物語』に描かれた源氏香図のパネルを展示。洋画家の中澤弘光が描いた極彩色の源氏香図は、現代でも通用するモダンなデザインに注目です!

 与謝野 晶子の後も、谷崎 潤一郎や円地 文子によって『源氏物語』の現代語訳が行われました。田辺 聖子は、物語を再構成した『新源氏物語』を発表。特別企画展では、『新源氏物語』の書籍などと併せて、田辺が少女時代に初めて『源氏物語』に触れた雑誌記事も紹介されています。

源氏M08

 宇治市源氏物語ミュージアムの名誉館長を務めた瀬戸内 寂聴訳の『源氏物語』は、準備に十年、執筆に六年もの歳月をかけた大作。読みやすさにこだわるとともに、僧侶として生活をおくった観点も加えた解釈が特徴となっています。

源氏M09

 会場内には、瀬戸内寂聴直筆の『橋姫』の原稿と出版本のページが展示されています。

源氏M10

 また、与謝野 晶子、田辺 聖子、瀬戸内 寂聴の3人が書いた『紅葉賀』の原稿も展示。三者三様の違いを、ぜひ見比べてみてください。

源氏M11

 「今回の特別企画展にお越しいただき、『源氏物語』の世界に触れてください」と話すのは、今回の特別企画展を担当した学芸員の坪内 淳仁さん。

 「『源氏物語』には、年齢を重ねたからこそ理解できる描写もたくさんあり、そこには時代を超えても変わらない人間の姿がありありと描かれています。1000年以上も読み継がれる『源氏物語』は、大河ドラマの予習にもつながるかもしれません。」(坪内さん)

 宇治市源氏物語ミュージアム特別企画展「このわたりに薫る君やさぶらふ」は、2024年2月4日(日曜日)まで。途中展示替えがあります。この機会に、ミュージアムで源氏物語の世界を体感してみてはいかがでしょうか。

イベント概要

源氏物語ミュージアム特別企画展「このわたりに薫る君やさぶらふ」

 『源氏物語』が、著されて千年余。この物語は絶え間なく読み継がれ、文学をはじめ、絵画、工芸、芸能など、様々な分野にも影響を与えてきました。またこれまで、多くの作家達によって、多彩な現代語訳が行われてきました。

 本特別企画展では、光源氏の物語だけではなく、光源氏がいなくなり、宇治が主な舞台となる「宇治十帖」について、江戸時代に描かれた屏風や画帖、版本で紹介します。

 また明治時代となり、歌集『みだれ髪』や「君死にたまふこと勿れ」の詩で知られる歌人与謝野晶子による現代語訳、『源氏物語』を現代的な読み物として再構成した田辺聖子による『新源氏物語』、さらに源氏物語ミュージアムの名誉館長であった瀬戸内寂聴訳『源氏物語』という三人の女流歌人や作家による『源氏物語』を通して、その魅力にせまります。

・会期 令和5年11月29日(水曜日)~令和6年2月4日(日曜日)※途中展示替えあり

・会場 宇治市源氏物語ミュージアム

・休館日 月曜日(祝日の場合はその翌日)、年末年始

・観覧料 大人600円(480円)、小人300円(240円)※( )内は20人以上の団体料金

関連企画

  1.  薫りにきく宇治十帖-花と香―

『源氏物語』の本文を味わい、日本文化における「薫り」の魅力に迫ります。

日時/令和6年1月11日(木曜日) 午後2時~午後4時

講演/珠寶さん(花士 青蓮舎主宰)、濱崎加奈子さん(京都府立大学准教授 公益財団法人有斐斎弘道館館長)

朗読/広田ゆうみさん(俳優)

鼎談/コーディネーター 家塚智子(宇治市源氏物語ミュージアム館長)

募集人数/80人

参加費/600円(ミュージアム観覧料を含む)

会場/宇治市源氏物語ミュージアム 講座室

 

  1. 鼎談「宇治十帖」の5人~男二人と女三人の生きざまを考える~

「60歳になったら『源氏物語』を読もう」をキャッチフレーズにしている講師を迎えて、当館館長、学芸員との鼎談を行います。

日時/令和6年1月25日(木曜日) 午後2時~午後3時30分

講師/たつみ都志さん(武庫川女子大学名誉教授)

募集人数/60人

参加費/600円(ミュージアム観覧料を含む)

会場/宇治市源氏物語ミュージアム 講座室

 


このページの先頭