ブックタイトル市政だより令和2年(2020年)5月1日号

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概要

市政だより令和2年(2020年)5月1日号

「府犯罪のない安心・安全なまちづくり計画検討委員会」の委員、また、市教育委員会の諮問機関「市学校安全管理に関する研究協力者会議」※の委員長を務められた藤岡一郎先生にお話を伺いました。※宇治小事件の後、市教育委員会は、諮問機関「市学校安全管理に関する研究協力者会議」を設け、「学校と地域の連携強化」を柱とした答申を受けました。社会から孤立をいかに無くすか世の中には様々な犯罪がありますが、社会的弱者である子どもや高齢者をターゲットとした犯罪をいかにして無くすかということは、地域社会にとって地域の力を試されているところだと考えます。社会的弱者を標的とした犯罪を無くすためには、家庭や地域の中で、孤立・孤独をどうやって無くすか、包摂社会(inclusive society)をいかに作るかというということが重要になってきます。そのためには、民生・児童委員や防犯推進委員、PTAなどの人が情報を共有するなど、横のつながりを持つということが非常に重要です。人間関係の希薄化により、「不審者」と「近くを散歩している人」との区別がつかなくなっているという問題もあります。それぞれの地域の特徴に合った方法で、子どもや高齢者を地域の力で犯罪から守るということが大切です。「地域社会を作る技術」が伝承されているかあえて「技術」という表現を使いますが、地域社会の担い手を次世代につなげていくには、苦労と喜びを伝承する必要があります。宇治の地域の防犯活動にとって宇治小事件は大きな教訓となりました。事件から16年の年月が経過し、地域の防犯活動はしっかりと今に継承されているでしょうか。定年の延長や共働き世帯の増加等、地域の防犯活動の担い手確保が難しい社会になっています。「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。」という言葉がありますが、実体験をどう次の世代に伝えるかということが重要です。地域の力を豊かにするには自由主義・個人主義は現代社会の大切な考え方ですが、利己主義・自己中心主義的な考えを持つ人が増えているように思います。地域の中で協力するためには、互助の精神を養うということが大切ではないでしょうか。人は、知らず知らずのうちに他者から助けられて生活しています。互助の精神を養うということが、地域の力を豊かにし、地域の防犯力を強めることにつながっているのではないでしょうか。犯罪はチャンスがあるからやる?犯罪が起こらない社会を作るための方法には、お互いが助け合い相談し合える地域を作るというソフト面の整備と、防犯カメラ設置やパトロール等の、犯罪を起こすチャンスを取り除くというハード面の整備があります。では、チャンスがあれば人は犯罪を犯すのでしょうか。昔は、「お天道様が見ているよ(人が見ていなくても、悪いことはしてはいけないよ)」というようなことを家庭で教えられました。現代の子どもは、ゲーム等から規範形成の影響を大いに受けています。個人の自由の根底には、自律(自分を律する心)が求められているということを、子どもに教えていくことも必要ではないでしょうか。犯罪や非行による被害者を出さないために防犯活動を行うのはとても大切なことです。一方で、住んでいる地域から犯罪・非行者つまり加害者を生まない地域社会をつくることも同様に大切だと思います。子育ても防犯?生まれる環境を子どもは選ぶことは出来ません。恵まれた環境もあれば恵まれない環境もあるでしょう。どのような環境に生まれても、様々な困難を乗り越えて心身ともに健全に生きてほしいと、両親をはじめ周りの大人は願っているはずです。子どもは社会の変化、人間関係の変化、そして家族の変化などに翻弄されながら一人一人の人生を歩んでいます。しかしちょっとしたつまずきをきっかけにして挫折から立ち直れず、非行(犯罪)に至る子どもがいます。その立ち直る力は、子ども時期の教育に係わりがあり、大切なこととしてしっかりと考えなければならないのですが、競争社会である現代社会にあっては子どものみならず、家庭への様々な支援が必要で、その支援の担い手のひとつが地域社会の底力なのだと思います。子育ては親だけでなく、学校そして地域社会の「教育」に依拠しています。「地域で子どもを守る、地域で子どもを育てる」という標語は、大切なことを教えてくれているように思います。京都産業大学名誉教授藤ふじ岡おか 一いち郎ろう先生7